「幸せってさ、やっぱり誰かの不幸せの上に成り立っていると思うんだ」


そう私は言った。すると幸次郎がどういうことだと首を傾げるので、例えば…と続ける。


「私が500円を落としたとする。すると私は、少し損した気分になるよね。…でも、それを君が拾ったとする。そしたら君は、少し得した気分になるだろう?そういうことだよ」


ねぇ?と同意を求めると、幸次郎は成る程な…と息をこぼした。じゃあ、幸せを手に入れるためには、誰かが不幸せにならないと駄目なのか?と、彼がこの話の主旨を言ってのけるので、私は少し嬉しくなった。


「そうだね、その通りだ。私が笑えば、誰かが泣く。私が泣けば、誰かが笑うんだよ」


悲しいことだと思った。でもそれで世の中の均衡は守られているのだろう。私は誰を幸せにして、誰が私を幸せにしてくれるのか。もう、ずいぶんと、幸せなんてものを味わっていない気がする。私だけが不幸。そんなことすら思ってしまうよ。ぼーっとそんなことを考えていたら、幸次郎はなにかを思い付いたように私を見た。


「理解した!」

「な、なにが…」

「ならば、お前を幸せにするためには、俺が不幸になればいいんだ。俺がお前に降り懸かる不幸を、全部受け止める。そしたらお前は幸せになれるだろう?」


俺はお前のための不幸なら、全部幸せにする自信があるから。だからこれでみんな幸せだ。だれも不幸になんてならないよ。


そう言って、にこりと笑うのは純心か。私は今まで幸せすぎて、不幸ばかりが目についていたのだと気がついた。何もいえなくて、ただ抱き着いたら、あったかくて。私はそんな君が好きなんだ。





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