「先生という職業は、まともで、模範にするべき思考を持ち、敬うほどの心を持った者がなるものだと、思っていたよ」


そう言うと、彼女は掠れた声で、無理に笑ってみせた。胸が痛くなるほどの哀しみを、どうして笑ってごまかそうとする。見ているこっちの胸の方が、張り裂けそうだ。…なんて言ってしまえば、君は泣くだろうか。…いや、泣くなんてことはしないだろう。きっと、君は優しいねなんて、囁く。それもあの、哀しい微笑みで。それが嫌で、俺はあえて黙っていた。



なにもかもを否定されたのだと、彼女は言った。人に何をいわれても、どんなふうに馬鹿にされても、笑顔だけは絶やさない彼女。だからこそ、縋り付いていたものを否定されれば、哀しむのも当然だろう。例えばそれは人であり、物であり、夢であり。彼女は自分以外の誰かを否定されれば、怒る。そして、自分以外の何かを否定されれば、泣くのだ。…そう、自分のためには何もできない人間だったと、俺は思う。それは長所であり、裏を返せば短所でもあった。



そんな彼女が、縋っていたのは夢。将来は教員になるのだと、常々言っていた。そのために勉強をし、そのために努力をするのだと。けれど、彼女はそんな夢を疑うほどの、衝撃を受けた。


―お前なんかに、教員など無理だ。


言ったのは総帥なき後を継いだ、名ばかりの顧問である。彼女は笑ってはいたものの、顧問がその場を去ってからは酷く哀しそうな顔をした。偶然を装い話し掛けてみると、彼女は無理に笑顔を作っていた。けれど、哀しみは拭いきれていなかったようで、表情に少し、表れていた。それはそうだろう。就きたい職に就いている者から否定されたのだ。心の傷は相当深い。










俺はすぐに、顧問の元へ走った。


これ以上、あいつを失望させないでくれ。










暴れるゴミを、俺は掃除した。彼女を苦しめるものなんて、すべてきえてなくなれ、と。





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