殴れば殴るほど君は静かになった。口からは血、目からは涙が垂れて。虚ろな瞳には闇しか見えず、俺の姿などは映ってはいない。舌を噛まないようにとはませた布きれは真っ赤に染まって、俺の本能を奮い立たせる。興奮とか欲情とかそんなものは一切ありはしない。ただ本能のままこの拳は踊っていた。腹が減って死にそうなときに、目の前に兎が飛び出してきたらどうする。可愛いと撫でるか?内臓を見るのが気持ち悪いと身を引くか?いや、俺は気がつかぬうちにその首を絞めて殺すだろう。その皮を剥いで、中身をくり抜いて、その血をすする。満たされる恍惚に、ため息すら零すのだ。

「世の中には人食人種というものがあってな。人間の肉を喰らって己の糧とするらしい。そして喰われた人間は、喰った人間の中で永遠に生き続けるんだ」

そう、それは興味深いね。彼女は最期まで微笑んでいた。俺はそんな彼女の首に、手をそえて力を入れる。ぎりぎりと腕に力が入るのを感じながら、昔読んだ兎の調理法を思い出していた。





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