痛みを忘れるためには、さらに強い痛みをと。君はそれを信じきっていた。苦しみや悲しみを忘れるために、痛みをひたすらに求める。消すべき痛みを越える痛みが、自身の身体を傷つけることで得られると、君が気づいたのはいつ頃だろう。ぼろぼろ、ぼろぼろと君は崩れていった。そしていつしか、君は自分で自身を傷つけることに疲れてしまった。他人に痛みを求め始めたのだ。そして選ばれたのは俺だった。1番近くにいたから。ずっと君を見守ると誓ったから。君は期待に満ちた目で俺を見る。だけど俺は、丁重に断った。君の申し出を拒否したのだ。君は泣き出しそうな顔をして、俺に向かって手を伸ばす。でもその手は届かない。モニター越しでは届くはずもない。そう、君は俺が観ている画面の中で生きていた。篭の中の昆虫を観察するよりも興味がわき、檻の中の動物を飼育するよりもやり甲斐のある。そんな存在になったのだ。月日が経つほど、君が壊れていくように。俺も壊れていくのだろうか。そんなことはわからない。考えれば考えるほどわからない。君が本当に壊れているのかすら。−ふと、モニターを見ると、君は俺を見上げていた。小さい箱から見上げる君は小さくて護りたくて。こんなにも儚いのに。どうして身体を傷つけるのだろう。俺にはわからなかった。そしてきっと一生理解しえないだろう。でもそれでもいい。君が俺の元で生きているだけでいい。俺は君が苦痛を補うために、より強い苦痛を求めることを否定しない。ただ見守るだけ。与えるだけ。だからずっと側にいてくれと、それだけ伝えて君を観た。





消すべき痛みを与える人物、全ての元凶を潰せば良いのだと、君が気づくのはいつ頃なのか。





俺は何を求めて生きているのだ。




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