誰かを護りたい。そんな思いよりも、もっと深い意思。それだけがオレをつき動かしていた。GKという最後の砦と言うべきポジション。計り知れないプレッシャーが重くのしかかってくる。しかしオレの力や帝国というチームの力を持ってすれば、止められないものなどないとさえ自負していた。チームが相手を攻めるのを観戦するくらいの気で、余裕を持って見ていられた。たとえ攻められたとしても、ゴールを割られたことは無いし、割らせる気も無い。王の名に恥じないプレーをしてきたつもりだ。全てチームのため、仲間のため、キャプテンのため。そして…。


「…源田、何処を見ている」

「………」

「おい、源田!打つぞ!」

「………」

「源田!」

「え?…あ、すまない」


ゴール内に転がるボール。その数の多さに驚いた。どれくらいの時間ぼーっとしていたのか、考えても分からない。だが鬼道の顔を見る限り、相当な時間だったに違いない。オレは最後だと自分に言い聞かせ、もう一度天井を見上げた。そして視界に映る人に別れを告げたのだった。


「さぁこい!鬼道!」

「………あ、あぁ」


うち鳴らされた両手には、すっぽりとボールが収まった。





王が仰ぐは、名も無い君。





君は誰をみているの?




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