「げんおうだって、はは…」

「あぁ、げんおうだな」

「………」

「…ん?どうした」


特に悪びれるそぶりもなく、君は首を傾げた。からかったつもりなのに、君はこの名前に誇りを持っているらしい。故に微笑みと共に反復された。面白くない、そう思っているのは私だけらしく、源田…いや、げんおうはじっと私を見つめていた。


「王様なんだ」

「そうだな、王だ」

「君が付けたの?」

「まさか。付けたのは世間だよ」

「…そう」


少し安心した。…何に?私は何が気に入らなかったのだろう。彼がげんおうと評されていること?それとも、彼が王という称号を手に入れたこと?…違う。私が恐れているのは。


「…大丈夫だ。俺はお前の側にいる」


君が私を置いていってしまうこと。それすら見通したように彼は言った。そして私の手を取り、自分の手を重ねた。温かくて人肌が伝わる手。辛い練習を重ね、傷だらけで硬かったけれど、なんだか柔らかい気がした。


「こうして、手を繋いでいればいい」

「…だとどうなるの」

「永遠に…一緒だ」


繋いだ手を見つめる君の目は、曇りなどなく透き通った色だった。とっくにくすんでしまった私の瞳とは似ても似つかない。そんな私に彼は言った。





くれぐれも、先にいかないでくれよ。





私は守れない約束はしたくなかった。




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