Part1 「佐久間くん佐久間くん」 「あ?なんだよ」 「ほら見てごらん、源田くん」 「源田?…あぁ、練習してるみたいだな」 「ね?いいよね。かっこいいなぁ」 みょうじは、そう言ってグラウンドに意識を集中させていた。もちろん目線の先には噂の源田の姿。うっとり、なんて擬音を使うときがくるとは思っていなかったけど、今まさにみょうじの目はうっとりとろとろしていた。 「源田かぁ…」 オレはとても恨めしい気持ちになった。なぜならオレがみょうじのことを好きだったからだ。それはもうマネージャーを務めはじめた時から、ずっと。みょうじの琴線のような張り詰めた雰囲気が、オレの柔らかい心臓をぐさりとひとつきした。その時の気持ちは忘れられない。…ま、失恋を核心したときの気持ちの方が生々しいけどな。 「…みょうじ」 「ん?」 「…オレも」 お前を好きでいて良いですか? そんなことは言えないけれど。 Part2 「源田」 「なんだ?」 「見てみろ、佐久間のやつ」 「佐久間?…あぁ、マネージャーと話をしているみたいだな」 「だろう?…あいつ怪我をしただなんて、嘘をついたな」 鬼道は、そう言ってベンチに意識を集中させていた。もちろん目線の先には噂の佐久間の姿。ぎろり、ゴーグルで瞳の様子は見えはしないが、今まさに鬼道の目は鬼のような気迫をしているのだろう。 「佐久間…」 俺はとても疎ましい気持ちになった。なぜなら佐久間がなまえと話をしていたからだ。それはもう楽しげに。俺だって話をしたい。笑い合いたい。なのになまえがいつも笑いかけるのは佐久間。俺は嫉妬に狂いそうになった。あぁこれが恋なんだなぁ。なんて思った時にはもう遅い。その恋はすでに終わっていた。 「鬼道」 「なんだ」 「…俺も」 彼女を好きでいて良いのかな。 そんなことは聞けないけれど。 → |