漆黒の闇から生まれたんだ。なんて、大層なことは俺には言えないし。あいつがクールにスマートに振る舞う中、時折見せる笑みに君が嬉しそうにするのを止める理由も見当たらなかった。 「…なまえ」 「なんだい」 「いいや、なんでも」 どうしたの、おかしい人だね。笑う君の手を取って、どこにも行くなと抱きしめたいなんて考えた。すぐにそんな我が儘は嫌がられるかなって考え直したけれど。どうして彼女は俺のものにならないんだろう。考えても考えても、答えなんて見つから無かった。 俺の敵は月光の。 妖しさを持った男だった。 俺がお前を絶対に守り抜く。なんて、大層なことは俺には言えない。だから奴が他人に優しく懸命に振る舞う中、時折見せる弱さにアンタが心配そうにするのを止める理由も見当たらなかった。 「…なまえ」 「なんだい」 「いや。なにも」 どうしたの、おかしい人だね。笑うアンタをつなぎ止めて、俺のものだと書いた首輪をしてやりたいなんて考えた。すぐにそんな嗜好、嫌がられるなと考え直したけれど。どうしてアンタは俺のものにならない。考えても考えても、苦しくなるだけだった。 俺の敵は日光の。 明るさを持った男だった。 → |