最近俺はカネダの家に泊まる事が多くなった。トモダチからコイビトという間柄になった俺達は、若気の至りもあってまぁそれなりにコイビトらしい事もしている。カネダの家はあまり人がいる気配がしない。カネダに兄弟もいなければ、両親だって仕事か何かで俺がカネダの家に入り浸っていても殆ど顔を合わせる事はなかった。それをいい事に俺は暇さえあればカネダの家に行っている。もちろん目的はエロい事をしに行くだけじゃなくて、一応俺だってカネダの傍にいる事を最上級に嬉しいと思っているわけなので、こうして今日も俺はカネダの家に向かっているのである。


「カネダーいるかー」


家の戸を半分開けて電気もついていない真っ暗な玄関に向かって呼び掛ける。しばらく待っていると奥からペタペタと小さな足音。暗闇からカネダが現れる。もう風呂を済ませたのかカネダはパジャマ姿という出で立ちだった。本人の体よりワンサイズでかいパジャマを着ているせいなのかいつもよりカネダが小さく見える。


「タ…、タミヤ君いらっしゃい」
「おう邪魔するぜ」


カネダはよそよそしくこんばんはと俺に頭を下げる。そのよそよそしさが俺の事を意識しているのだと感じさせたた。ただでさえ来る度にほぼ毎回体を重ねているのだからそういう反応になっても当然と云ったらそうなのだろうか。俺は案内されるがままに二階のカネダの部屋までやって来た。中に入ると電気も付けられていない。ただ窓が開いていてそこから月の光だけが覗いていた。薄暗い室内ではカネダの肌がいつもに増して青白く見えた。そのカネダといえばベッドの上で丸まって座っているだけ。時折こちらをチラリと見ては俺と目が合うとすぐに視線を伏せてしまう。


「カネダ」
「え?なに」
「ツメ、噛むのやめろよな」
「え、あぁ、うん」


曖昧な返答をしてカネダは唇から親指を離した。親指の爪を噛む、というのがカネダの癖だ。カネダは暇さえあれば常に爪を噛んでいるイメージがある。というか本当にそうなのだ。小さな子供が指をしゃぶってしまうのは、母親を求めているからだと前にテレビか何かで聞いた事がある。母乳を飲む時に母親の乳房に吸い付く事からきている行動らしい。カネダがよくやる爪を噛むのもこれに近いものがある。爪を噛むやつは幼少期に親や周囲の人間から愛情を十分に受けていない傾向があるらしい。確かにカネダに兄弟はいないし、両親も共働き。小さい頃から孤独で寂しい思いをしてきたのだろうかと心配になる。だからカネダの青白い手を掴んで抱き寄せた。


「リク、」
「な、なにタミヤ君」
「大丈夫だ」
「え?」
「俺はずっとお前の傍にいるからな」
「…タミヤ君どうしたの」
「ん、ただ、リクが好きだよって云いたいんだよ俺は」
「もう、タミヤ君ってば」


俺の腕の中でリクが笑う。それが俺にとっては何よりも安心で何よりも幸せだと感じた。今までの人生で埋まらなかった愛情の穴は俺が埋めるよ、リク。だから俺はその分もお前を守って愛するよ。そう誓う。


「なぁ、リク…しよ」
「え…っ、」
「ダメか?」
「ううん、………いいよ」


リクのはにかんだ顔を包んで、俺はその唇にキスを落とした。ふと時計を見るともうすでに日付は変わっていた。


真夜中のみなしご

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