アイリス ラヴ ??? 2
『わかってるよ。ローザ』
もう一度、ユキは言った。
カッペッレェリーアは一幹部だが、ノヴィルーニオファミリーの中では一番の能吏だ。
奴さえ仕留めれば、島にいる彼の部下達にはボンゴレと交渉を続ける術はない。戦闘に長けていても、指揮官がいなくてはどうにもならない。
だからカッペッレェリーアを仕留めるのが、ジョットを救い、ボンゴレを救う一番の方法だった。
ユキはローザの緑色の瞳を覗き込み、安心させるように頷いて見せた。
『ジョットを救うためなら、私はどんなことをされたとしても、必ず奴を殺すよ』
穏やかすぎる、笑顔だった。
だからそんな顔をしないでと言われ、ローザの目からは涙が溢れた。
なんて馬鹿な子なんだろう。
そんな確固たる意志を持ちながら、なんで好きかどうかわからないのだろう。
ねぇボンゴレのボス。
あんたは幸せ者だよ。
あんたのために、憎い男に抱かれ、その男を殺すと言うユキは…泣きたくなるくらい、綺麗だよ。
* * *
カルロッタはローザを宥めるユキを見ながら、ある思考を廻らせていた。
ジョット様は見抜いていたのだろうか。
ユキ様がこれほど、マフィアとしての素晴らしい器を持っていたことに。
いや、パーティでお会いした時点では、ユキ様はジョット様と守護者様達に拾われた一般人の域を出ていなかった。
だがキャバッローネの暗殺者からジョット様を守った瞬間、ユキ様は確かにマフィアとして、ジョット様の横に立つに相応しい女性になった。
あの一瞬で、驚くほどの成長を遂げた。
だがこの部屋にユキ様が現れた時、私はこの方が新たな変貌を遂げたことに気づいた。
別荘を襲撃され、部下を殺され、ジョット様と離れ一人で基地ユニットへ行こうとし、捕まった。
それでも今の状況を打開しようと、この計画を考え出した。
普通はありえない。
普通人間は、こんな速さで成長はできない。
少し前までただの一般人だったのに、彼女は明日の夜、この争いにおける敵のトップを殺すという。
そのためなら、その男に抱かれることも辞さないと。
なんという覚悟だろう。
ユキ様、貴女は自分の成長なんて考えたこともないだろうからわからないでしょうけれど、これは驚異的なこと。
けれど貴女は自分がどうしてここまでするのかを考えた方がいいかもしれない。
ああでも、ユキ様の場合は考えない方がいいかもしれない。
貴女にアドバイスをした人も、そう思ったのかも。
考え込みすぎても、駄目なんでしょうね…きっと。
なんとなく、ジョット様に同情したくなりました。
でもジョット様も悪いんだと思います。想像だけど。
こういう方は、はっきり言わないとわからないと思います。
いっそ羨ましいほど、綺麗に並んだ2人の想い。
(でもその想いは、まだ重なってはいないのです)
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