恋物語カプリ島編 | ナノ


エバーグリーン プロミス 2


『よく聞け。ビルボのNo.3が裏切っていた。Gもすでにこのことを知っているが、通達には時間がかかる。Gはきっとビルボファミリーの部隊と近いランポウの部隊にまず伝えようとするだろう。だからお前はここから逃げて…』

『Gの部隊ともランポウの部隊とも離れた…Dの部隊に連絡する』


 自分のやるべきことを理解したユキに、ジョットは笑みを向ける。

 そしてグローブの上からつけていたリングを抜き取り、ユキの手を取ってそれを握らせる。


『これをお前に預ける』

『!ボンゴレリングを…どうして!?』


 慌てて返そうとするユキの手を、ジョットは押しとどめる。


『奴らの手にリングを渡すわけにはいかないからな。大丈夫だ。リングがなくても俺は強い』


 それに…とジョットはリングを持つユキの手を強く握る。





『お前はこのリングを持ったまま死んだりしないだろう?』





 それには願いが込められていた。





 俺の大事な人と、大事なリング。

 必ず…俺のもとへ戻ってきてくれ。
 そんな気持ちを込めて、ジョットはユキに微笑みかける。


『お願いだ。…ユキ』

『ジョット…』


 オレンジの瞳を見返して、ユキはきゅっと口を引き結ぶ。

 涙が出そうになるのを堪えて、ジョットの右手をとって唇を落とす。





『おまかせください。ボス』





 柔らかい唇の感触は、ジョットの手に甘い痺れをもたらした。

 リングを預けた代わりに、とても素晴らしいものをもらった気分になり、ジョットは口元に笑みを浮かべる。

 そしてユキの頭を引き寄せ、かき抱いた。


『ユキ…。生きて会えたら……いや、違うな』


 ユキの耳元で、ジョットの金髪がさらりと揺れた。低く甘い声が直接注がれる。





『次に会った時…話したいことがある』





 あたたかい体温を感じ、ユキはジョットを抱き締め返す。


 一瞬、このまま溶けてしまいたいと思った。

 このあたたかい場所から離れたくない。

 ジョットが1人で行ってしまう。カッペッレェリーアと、裏切り者がいるビルボファミリーに捕まってしまうかもしれない。

 ううん。きっと捕まってしまう。

 そう思うと、寒気がした。

 捕まる可能性が高いから、ジョットは私にリングを預けたのだから。



 一緒に連れて行って欲しいと懇願したくなった。


 それをぐっと堪え、ユキは体を離す。

 ジョットの金髪を、優しいオレンジの瞳を、涙が出そうなほど綺麗なその顔を。

 また会えるとわかっていても、記憶に焼き付けたかった。


 私にもっと力があれば、ジョットを守れるくらい強ければ。

 敵に捕まるなんて屈辱を味わわせずに済んだのに。

 悔しくて、辛くてたまらなかった。

 でもそれを顔に出すとジョットに心配をかけるので、ユキは笑顔を向ける。





『私も…次に会ったら話したいことができてると、思う』





 ああ。なんて曖昧な返事なのだろう。

 だが彼に嘘はつきたくなかった。

 まだヒントをもらったばかりで、答えはでていないから。



 ジョットはユキの返事に驚いたように目を瞬かせたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。


『わかった。次に会ったら…2人で話そう』

『うん。…約束、しよう?』


 ユキが差し出した小指に、ジョットは照れ臭そうに自分の指を絡める。

 胸が痛くなった。

 ジョットとユキは、2人とも同じ気持ちであることに気付かないまま、胸の痛みを感じていた。










 手が離れると、2人は別々の方向へと走り出した。








(約束を…した)







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