恋物語カプリ島編 | ナノ


オールドライラック ストラテジー 3







 突然話が変わって驚くユキに、雨月が慌てたような声を上げる。


『プリーモ…まさかユキを連れて行く気でござるか?』

『今回は守護者全員で出る大捕り物だからな。ユキを1人残して行くわけにもいかないし、2人で旅行ということにした方がそれっぽいだろ』


 そこまで聞いて、ユキは話が変わったわけではないことにようやく気づく。

 ジョットとユキが2人で旅行という名目で現地に赴き、かねてよりボンゴレを警戒しているノヴィルーニオファミリーの注意を引きつける。

 その間に守護者達が部隊を配置し、女達が捕らわれている場所を探る。

 女達と、カッペッレェリーアの居場所が確認でき次第、救出及び捕獲作戦を決行するという計画だ。



 ジョットは話の展開が速すぎてついていけていないユキを戸惑っていると勘違いしたのか、少し慌てたようにユキに向かって言う。


『囮とはいえノヴィルーニオにいきなり俺を襲撃する度胸はないし、してきてもあんな奴らは相手じゃない。ただ作戦成功のために俺と別荘で過ごしてくれればいいんだ。何も怖いことはない』

『や、違うの。怖いわけじゃなくて…。その、つまり…』


 もじもじと言い淀んでいたユキは、怪訝そうな顔をするジョットにきらきらと輝くマホガニーの瞳を向ける。


『私も、作戦に参加できるってことだよね?』


 とても嬉しそうに笑うユキに、皆は一瞬呆気にとられた後、それぞれ堪えきれなかったように笑い出す。

 ユキは雨月の授業を受けている時から、売春業をやっているというノヴィルーニオファミリーのことを嫌悪していた。女の敵!そんなファミリー潰してしまえというようなことを不快感丸出しで言っていたのをボスと守護者達は思い出す。

 ジョットは苦笑いを浮かべてユキに向かって小首を傾げて見せる。


『マフィアとして初めての作戦参加だな。それは俺との旅行より嬉しいのか?』

『えっ?いやっ、そういうわけじゃなくてっ!』

『プリーモ。そうからかってやるな。で、俺にも内緒で買ったその別荘はどこにあるんだ?』


 ジョットが顔を真っ赤にするユキにさらに口説き文句を重ねようとするのを、Gが止める。



 Gが訊いた別荘の場所はそれイコール、カッペッレェリーアと捕らわれた女達がいる場所だ。





 ジョットはゆったりと微笑んで、南の方を指差す。











『Isola di Capli《カプリ島》だ』













(よし、至急幹部と同盟ファミリーに通達だ。会議を開こう)

(そうだな。プリーモ、出発はいつでござるか?)

(ん? あぁ、明日だ)










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