恋物語番外編 | ナノ


手紙の中のアミーコ 1


 ある日の午後。郵便係の少年がなんとも微妙な顔をして差し出してきた手紙を、なまえは小さく首を傾げて受け取った。








手紙の中のアミーコ








【ボンゴレ屋敷のハウスメイド、ジャポネーゼのお嬢さん、ああ…なんと呼べばいいのかな。
 とにかくなまえ、はじめまして。俺の名前はコザァート。
 シモンファミリーのボス、シモン=コザァート。ジョットの親友だ。
 突然の手紙に驚いているだろうね。だけど安心して読んでほしい。君相手の手紙だから、きっとこの手紙はボンゴレの検閲にかかっている。
 君を不快にさせる内容が書いてあったら、きっと君の手には渡らない。だから今君がこれを読んでいるなら大丈夫だ。

 …書いていてわけがわからなくなってきたな。
 あぁすまない。君に手紙を書いたのは、君と話がしてみたくなったからなんだ。
 ジョットからの手紙に、君のことが書いてあった。日本人の女性を引き取ったと聞いたときは驚いたよ。
 イタリアでの生活は慣れたかい?俺はジョットとGとしか面識はないが、二人とも良い奴だから、困ったことがあれば遠慮なく頼ってやればいい。

 それでだ、俺はシモンファミリーのボスだと名乗ったが、俺のファミリーはとても人数が少ない。それこそ普通の大家族というくらいだ。
 だがボンゴレは巨大組織だ。そのボスというのはいろいろと気疲れするのだろう。
 ジョットはあまり多くを語らない。だがそういった疲れが手紙の文面からも感じられていたんだが、君が手紙に登場するときは、とても楽しそうに見えるんだ。
 もちろん、綴ってある字を見てね。いつもと同じ文字のはずなのに不思議だと思うかい?
 でも、俺にはそう思えるんだ。

 だから君と話がしてみたくなったんだ。君がどんな人か知りたいし、君なら俺の知らないジョットの様子を教えてくれるんじゃないかと思ってね。
 あいつが、無理をしていないか心配なんだ。
 もちろん俺のことも知ってほしいし、君が望むなら俺が知ってるジョットのことも教える。
 といっても、俺が知ってるのはマフィアになる前のジョットだが。
 また手紙を書いていいかな。
 もし君が気まぐれに返事をくれるというのなら、3のつく日の夜8時から30分の間に、下記の地図の街のポストに投函してくれ。
 住所は書かなくていい。宛名に《Cozzato》と書いてくれればそれで着く。

 それじゃあ、また

 あ、このことはジョットには内緒にしてくれ。きっと怒るから。

 君の新しい友人 コザァートより】





* * *





『あのバカ…』


 低く呟く声が耳に届き、なまえはうっすらと目を開けた。

 ああいけない。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 覚醒しきっていない、ぼうっとする頭のまま顔を上げると、すぐ目の前に輝く金色の髪と不機嫌そうに細められたオレンジ色の瞳、ストライプのベストがあった。

 目から入ってくる情報を総合すると、不機嫌そうなジョットが自分の向かいの椅子に座っている。

 その右手に自分宛ての手紙が握られているのに気付いたなまえは『あ!』と声を上げて手を伸ばす。

 だがさっと避けられて、代わりに伸ばした腕を、ジョットの手紙を持っていない方の手で捕まれてしまった。







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