恋物語番外編 | ナノ


11 novembre


『Gっ。Gぃー』


 頭をぺしぺしと叩かれて目が覚めた。

 全身に水分をたっぷり含んだ泥がまとわりついているような、重い目覚めを感じている。

 瞼が上手く動かない。昨日の夕食後から、ひたすらデスクに向かって書類にペンを走らせていた。

 空が白み始めたころに一度2分程気絶して、目覚めて書類整理を再開して……。


 今は、何時だ……?


『Gーぃー?』

『あ゛ー…なんだ?』


 声ががらがらだった。まるで二日酔いのような。

 瞼をなんとか動かす。デスクを挟んで向かいに立つなまえの顔は見えたが、きっと目は3割も開いていないだろう。


 ことり。目の前にカップが置かれた。

 湯気の立つ、苦みを含んだコーヒーの香りが鼻を刺激した。

 ほとんど無意識にカップに手を伸ばす。

 ひとくち、口に含むと一瞬で濃いめのコーヒーが徹夜明けの体に沁み渡った。

 思わず溜め息が零れる。


『美味い……』

『よかった』


 なまえがふわりと笑ったのがわかった。

 瞼が徐々に開いてくるのを感じていると、唇に何かが触れた。


『G、あーん』

『あ』


 唇を少し開くと、口内に甘い香りが広がった。

 これは、チョコレートか…?

 視界がやっとクリアになった。8割程。


『なんだ?これ』


 ぽり、と音が鳴る。細長いビスコットにチョコレートがコーティングされた菓子だった。

 なまえが菓子から手を離してしまっていたので、慌てて落ちないようにくわえ直す。

 ビスコットは小指程の細さで、チョコレートはほんのりとした甘さだった。よくある組み合わせのようだが、見たことのない菓子だ。


『今日は11/11だから、作ってみたんだー』

『は?』

『でもこれ以上細く作るのは無理だったよ』


 何の話だ?と思ったが、問う前になまえは無理しないでねーと言って部屋を出て行ってしまった。


『んー……』


 しばらくぼうっとしていたが、立ち上がる。

 いつの間にか、細長い菓子は半分に減っていた。

 端の部分2センチにだけチョコレートがかかっていなくて、なるほどここが持ち手かと気づく。

 咀嚼しているうちに、空腹を感じている。そりゃそうか、もう半日何も食べていない。





『お?』

『おー…』


 ドアを開けると、ジョットが目の前を通過するところだった。

 同じように細長い菓子をくわえている。彼の部屋にもなまえが来たのだろう。





 自分と同じく夜通し書類整理に追われていたジョットの腫れぼったい瞼と眠そうな間抜け面を見て、自分も同じ顔をしているのかと複雑な気持ちになる。







『あれ…?ボスにGだものね…』


 隣にの部屋のドアが開き、ランポウが顔を出した。

 同じ顔をした奴が三人、全員細長い菓子をくわえている。








 笑った。





11 novembre





(で、このお菓子は何なんだものね?)

(今日はその菓子の日らしいぞ)

(ほんとはもっと細いんだよー)





* * *


突発ポッ○ー&プリッ○の日ネタです(^ω^*)



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