恋物語番外編 | ナノ


輝いて見えるのはそれが…


輝いて見えるの








 心地良い疲れが全身に行き渡っているような、そんな気がした。

 閉じた瞼に光が直撃しているような気がして、なまえは顔を逸らし、薄目を開ける。

 眩しい、と声に出さずに呟いたとき、ふっと目に突き刺さっていた光がなくなった。

 何度か瞬きをしてから目を開けると、光を遮るように目の前に大きな手が翳されていた。


『G…?』


 手の持ち主の名を呼ぶと、掠れた声が出た。

 地面の上に寝転んでいるなまえの隣に座っていたGは、口の端を少しだけ上げた。


『起きたか…。悪かったな。日の向きには気をつけていたんだが』


 渡された水を顔だけ上げてひとくち飲んで、思い出した。

 野外での実戦訓練の最中に倒れたのだ。熱中症だろう、とGは苦笑した。


『お前を休ませるだけのつもりだったんだが、つい俺も寝ちまった』


 夕方になりつつあった。辺りはオレンジ色に変わり始め、思ったより長い時間眠っていたんだな、と思いながら顔を上げたなまえは、ふわりと微笑んだ。


『G…綺麗。すごくきらきらしてる』

『あ?』


 怪訝そうな顔をするGの赤い髪が、夕陽の光を孕んできらきらと輝いていた。

 見慣れた赤い色ではなく、少しオレンジがかったそれも、彼によく似合っていた。

 そう言うと、Gは困ったようになまえから目を逸らした。


『なんだそりゃ』

『だって、本当にきらきら光って、綺麗なんだよ』


 ちょっと感動しちゃうくらい、と微笑むなまえに、Gは手を差し出した。

 首を傾げると、起きろと言われてその手を取る。引っ張り上げられて、なまえは上半身を起こした。

 帰るのかと思ったら、今度はGが地面に寝転がった。


『なまえ』

『んー?』
『こっち向け』


 振り返ると、頭の後ろで手を組んだGと視線が合った。

 Gはふっと微笑んで、手を伸ばした。耳の傍を流れる髪を、Gの指がするりと撫でていく。


『確かに、綺麗だな…』


 なまえのマホガニーの髪が、金色で縁取られているように輝いている。

 そう言われたなまえは、口をへの字に曲げる。


『私が綺麗だと思った色とは違うよ。Gの髪が綺麗だったんだから』

『そうかよ』


 Gは喉の奥でくっと笑いを零して、なまえを見上げた。


『いいんだよ。俺が見たいのは俺じゃねぇしな』


 自分なんて見ても仕方がない。

 いくら夕陽に照らされていようと、自分を綺麗だなんて思えない。

 そう思えるのはよほどナルシストか、よほど客観的か。



 まぁそれでも、とGが勢いをつけて体を起こす。


『自分じゃなけりゃ皆綺麗ってわけでもねぇしな』

『そっか』

『あぁ』

『そうだね。私もGだから綺麗だって思ったんだと思う』

『そうか?』

『うん』

『そうか…』

『うん?』

『俺も、そうだな』

『そう?』

『あぁ』

『そっか…』

『あぁ…』


 帰るぞと言って、Gが立ち上がる。

 頷いて、差し出された手をなまえは取った。





 予定外の休憩を取った二人は、休んだ分の仕事を片付けるために屋敷への道を歩き出す。








輝いて見えるのだから…







(ねぇGー。もう手離していいよ)

(足がまだ少しふらついてるだろうが。帰ったら一応医者を呼ぶぞ)





* * *

9000番を踏んでくださった美香様リクエストのG様です。
かっこいいというより優しいG様になりました(^∀^)
ほのぼの…でもなく穏やかな話になったかと。こんな感じで大丈夫でしたでしょうか?
美香様のみお持ち帰り可です!
また機会があれば是非リクエストしてください。



A2

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