手紙の中のアミーコ 3
『この写真は気に入らないな。だいたい、写真が欲しければいくらでもやるのに』
『え?ジョットって写真嫌いじゃなかったの?』
『は?』
驚いたなまえの言葉に、ジョットは思わず頓狂な声を上げる。
『だって、この前本部からボスの写真をって言われてた時、写真はない、撮るのも断る!って怒ってたから嫌いなんだとばかり…』
『それは同盟ファミリーの幹部(の娘)やどこかの貴族(の娘)が欲しがってるとか言うから嫌だと言っただけだ。別に嫌いなわけじゃない。嫌いだとしても、お前が欲しいなら写真くらいいくらでもやる』
お前が望むなら、なんだって…。
そう言いかけて、ジョットはテーブルに置かれたコザァートからなまえに送られた手紙を指でトン、と示す。
『だから、コザァートに写真が欲しいと言ったのか?』
微笑を浮かべて言われた言葉に、なまえは頬を紅潮させてジョットから目を逸らした。
『ごめんなさい…』
『だから怒っていないといっただろう。別のをやるから、この写真は俺に渡してくれ…と言ってもダメなんだろうな』
微笑を苦笑に変えてジョットが言うと、なまえは笑顔で頷いた。
この写真はコザァートからの贈り物だ。いくらジョットが頼んだとしてもなまえが自分に贈られたものを渡すはずがない。
もう少しまともに写っているものを贈ってくれればいいものを…と遠くに住む親友を恨みがましく思った時、なまえがぱんっと両手を合わせた。
『ねぇジョット、今から写真を撮らない?』
『写真を?』
きょとんと問い返すジョットに、なまえはにこりと微笑んで頷いた。
『コザァートさんが私の写真が欲しいって言うから、今日Gに撮ってもらうつもりだったの。ジョットが写真嫌いじゃないなら一緒に…』
なまえが全て言い終える前に、ジョットはなまえの手を掴んで椅子から立ち上がり、声を張り上げた。
『G!今すぐ写真機を用意しろ!今すぐだぞ!』
廊下の向こうから『ああ、わかった。…くくっ』と右腕から笑いを含んだ返事が聞こえ、ジョットは憮然とした表情を浮かべる。
なまえの方を向くと、彼女はジョットに腕を掴まれたままとても嬉しそうに立ち上がる。
なまえの腕を引いてGの元へ向かいながら、ジョットはコザァートに手紙を書こうと考えていた。
勝手になまえに手紙を出したこと、なんて言ってやろうか…なんて。
そもそもなんであの写真をチョイスしたのか。もっとましなものがあっただろう。
でも、まぁいい。
コザァートに“初めての手紙を送った相手”は譲るが、“初めて一緒に写真を撮る相手”は俺のものだ。
そう思ったら、少しだけ溜飲が下げられた気がして、気分がよくなった。
なんだかんだ言って、自分は嬉しいのだろうとジョットは気づいた。
コザァートとなまえが…親友と、大事な人が仲良くなったことが、嬉しくないわけがないのだ。
手紙の中のアミーコ
(おう、準備できてるぞ)
(ありがとう!Gも一緒に写ろうよ)
(まずはジョットとお前だ(ジョットの気が済むまで))
(そうだ。まず俺となまえだ(俺の気が済むまで))
* * *
7000番を踏んでくださった月様リクエスト、ジョット嫉妬夢でした。 読んで下さってありがとうございます!A2です。 嫉妬相手はコザァートさんでと言われて、コザァートさんどう出そう?難しい?でもコザァートさん出したい! の結果、コザァートさんはお手紙での登場となりました。 口調難しいですコザァートさん。ジョット様と似てるので余計に。でも書いてて楽しかったです。 ぬるい嫉妬夢になってしまいまして申し訳ありません(土下座)
月様リクエストありがとうございました!
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