恋物語パーティ編 | ナノ


カクタス サブジュゲーション 1


流血表現注意!




カクタス サブジュゲーション








 信じられなかった。

 ボンゴレに拾われてたった数ヶ月と聞いていた。

 その間戦場に出たこともなく、任務をこなしたこともないことは確認していた。

 ましてやナイフに刺されるなどという体験などしたこともないはずだ。

 ユキという娘は一般人…そう、ただの女のはずだった。








 そのただの女は、ジョットを襲ったナイフを自分の右手を犠牲にして止め、引き抜いたナイフの柄を使ってキャバッローネが最も信頼する暗殺者を昏倒させた。





* * *





 右手から血を流し、崩れ落ちた暗殺者を荒い呼吸を繰り返しながら見下ろしたユキは、はっと我に返り体ごと振り向いた。


『ジョット!!』


 ほとんど悲鳴のような声を上げてユキはジョットに縋りついた。


『ごめんなさいジョット!止め切れなかった!早く手当てしないと!』


 ユキの手を貫いたナイフはジョットのわき腹を傷つけたらしく、ダークグレイのスーツには血が滲んでいた。

 自分の怪我の痛みは全く感じていないのか、ユキは血塗れの手でスーツを脱がそうとする。

 ジョットは呆然と立っていたが、焦点をユキに合わせると慌てたように華奢な肩を掴む。


『馬鹿!俺のことなんかいいんだ!くそっ医者はいないか!?G!G、早く来い!』


 左手の手袋を脱がせ右手にきつく押し当てながらジョットは声を張り上げる。

 途端、静まり返っていた会場内が騒然となる。

 ドレス姿の少女達からは悲鳴が上がり、走ってきたナックルによって気絶している暗殺者は縛り上げられた。

 他の招待客を突き飛ばす勢いですっ飛んできたGがユキの怪我を診る。

 そこでやっと自分の怪我を自覚したユキは傷口を直視してしまい、ショックと痛みに体をふらつかせる。

 ジョットはしっかりとユキを抱き、その場に座らせた。

 自分も座ってしまいたかった。それほどジョットの体調は最悪だったが、歯を食いしばって堪える。





『なんてことでしょう!ジョット様にお怪我を負わせお召し物を汚すなんて!』


 思わず耳を塞ぎたくなるような甲高い叫びに、全員が注目した。

 派手なドレスを着た中年の女が、ユキに向かって人差し指を向けている。顔が異常に赤いのは興奮している所為なのか酒の所為なのかはわからなかった。

 娘と思われるベビーピンクと薄いブルーの、ドレスの少女2人が焦ったように女の袖を引くが、女の口は止まらない。


『パーティを血で汚すなどとなんて無粋な!しかも相手を殴り倒すなんて!なんて品のない女なのでしょう!』


 金切り声を上げる女を、ジョットは射殺しそうな目で見据えながらGに声をかける。


『あの女はなんなんだ?』

『ビルボファミリーボス夫人だ。門外顧問の件をぺらぺら喋って回っていた女でもある』


 あぁ…とジョットがDからの報告を思い出し納得している間も、ビルボ夫人はユキをこき下ろすことを止めようとしない。