恋物語パーティ編 | ナノ


シグナルレッド ブラスト ア ウィンド 1


流血表現注意!



シグナルレッド ブラスト ア ウィンド








 頭がくらくらする。



 ジョットがそう思ったのは、ユキを伴って招待客への挨拶回りをしている最中だった。

 ユキはボンゴレに入った経緯を事前に打ち合わせた通り完璧に答え、寄せられる称賛には丁寧なイタリア語で礼を返した。

 恋人関係だの結婚だのの内容に触れようとする輩には、ジョットが(目が笑っていないタイプの)笑顔を向けて黙らせた。

 後はキャバッローネだけだった。

 ユキの存在をずっと訝っていた彼に、彼女を紹介するだけだった。

 そしてこう言うのだ。



 ユキは俺の女ではない。だが、彼女を手放すつもりは毛頭ない。



 マフィアのことも生臭い世界も、何も知らなかった彼女だが、俺は彼女の覚悟を受け入れた。





 それが全てだ。





『やぁプリーモ。楽しんでいただけているかな?』

『ああ。最高のパーティだ。キャバッローネ』


 そう答えて、金髪の紳士と笑顔で握手を交わすユキをジョットは見る。

 そして再び襲ってきた眩暈に頭を軽く押さえた。



 ダンスで酒が回ったか…?



 お笑い種だな。





* * *





 キャバッローネにはボスが絶対の信頼を寄せる暗殺者がいた。

 気配もなく、人の目に映ることもなく獲物を狩る暗殺者だ。

 暗殺者はボスの主催したパーティにボスの付き人として同行した。

 ボスの命令を実行するために。

 ボスは今、同盟ファミリーのボスであるボンゴレプリーモとそのパートナーと会話をしている。

 パーティ前に会った時のボンゴレプリーモは、見慣れないキャバッローネの付き人の存在に不思議そうな顔をしていたが、特に気に留めてはいないようだった。

 よって、暗殺者が己のボスの元に戻るために自分達の傍に寄ることに、彼も彼のパートナーも何の疑問も持たないだろう。





【私はこの計画が終われば死ぬだろう】





 主君であるキャバッローネセコーンドはそう言って、長年彼に従ってきた暗殺者に笑みを向けた。

 だがこの計画はボンゴレだけではない、今解決しないとキャバッローネにも多大なる影響が出る。

 そう言った君主に、暗殺者はただ跪く。


 このパーティは血で汚れる。


 ボスが死ぬなら、暗殺者もその後を追うだろう。

 セコーンドからはテールツォとなる息子を頼むと言われたが、それは自分の役ではない。





 自分のターゲットが視界に入り、暗殺者は全ての思考を止めた。





 ここからは任務のみ。





 目指すのは己の君主より少しだけ明るく輝く金髪の男と、その隣に寄り添う琥珀色のドレス。


 暗殺者は袖に仕込んだナイフの感触を確かめる。








 一瞬で、全てが変わる代物だ。