シャンパン トゥインクル トゥインクル 1
シャンパン トゥインクル トゥインクル
輝いていた。
一本一本が光を孕む金の髪。ダークグレイのストライプのスーツ。
あたたかい炎のような、オレンジ色の瞳。
数回のノックの後開けられたドアから現れたジョットは、ユキを見て驚いたように息を呑んだ。
だがそれは一瞬で、ジョットはユキと視線を合わせてふわりと微笑んだ。
どくん、と音を立てて跳ねる心臓に、ユキは思わず胸を押さえる。
なぜだろう。涙が出そうだ。
『ユキ…とても『綺麗…』
思わず、ジョットの言葉を遮ってしまう。
この人はとても綺麗だ。きらきらしていて、こんなにもあたたかい。
俺のセリフを取るなよ、と困ったように笑うジョットを、ユキは込み上げる気持ちの名前を見つけられないまま笑顔で見つめ返した。
* * *
パーティはユキの想像を遥かに超えた豪華さだった。
会場であるボンゴレ本部内の大ホールにはすでに招待客が集まっていた。
主催者としてキャバッローネのボスが、会場提供者としてジョットが挨拶するのを聞きながら、ユキはできるだけきょろきょろしないように気をつけつつシャンパンに口をつけた。
さすがマフィアのパーティといったところか、参加している紳士のほとんどは品がありながらも体格の良い強面ばかりだ。
着飾った女性達はさすがに不躾な視線を向けてきたりはしないものの、ユキと周りにいる守護者達をちらちらと見ている。
『結局アラウディさんはいないんだものね』
『究極に何をしにきたのだあいつは』
予想できたことだが、会場にアラウディの姿はない。
ユキは結局会場に来てから会えていないのだが、人の多い場所は嫌いだという彼らしい。
『同盟ファミリーの人達に紹介するって言われてたけど、ジョットの挨拶が終わってからかな?』
『いや、お前を紹介するのはもっと後だ。せっかくのパーティだから一通り楽しんでからの方がいいだろう』
とキャバッローネが言っていた、という部分をGは口に出さずに飲み込んだ。
ユキのパーティでの様子を観察するつもりでいるのだろうが、それをわざわざユキに告げるつもりはなかった。
『さて、我々もそろそろ散りましょうか』
アイビーグレイのスーツを着たDがボーイに空になったグラスを返す。
ちょうどジョットの挨拶が終わり、招待客に歓談とダンスが促されたタイミングだった。
自分の言葉にユキのマホガニーの瞳が不安に揺れたのをDは見逃さず、彼女の手を取り手袋越しに掌にキスを落とす。
『パートナーが戻ってくれば我々は用無しですよ。貴女はプリーモの横で堂々と顔を上げていることだけを考えなさい』
告げられた忠告にユキが真面目な顔つきで頷いたのを確認して、Dは彼女に耳打ちした後新しいグラスを取って会場の中心へと進んでいく。
それを合図に雨月、ランポウ、ナックルも思い思いの方向に散って行く。
残ったGは苦笑しているユキに顔を近づける。
『何を言われた?』
『“次回は私のパートナーに”だって』
『…ちゃっかりしてやがる』
苦笑いを浮かべてGはユキの背中に手をあてて歩くよう促す。
彼女のパートナーが静かに、美しく、しかし少しだけ早足でこちらに向かっていたから。
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