恋物語パーティ編 | ナノ


アザレ エゴイズム 1


アザレ エゴイズム







『せっ!…っ、やぁっ!』

『足の運びが甘ぇ!そんなんだとすぐにやられるぞ!』


 Xデーから3週間が経った、細かい雨が降り注ぐ午後。ボンゴレ屋敷の地下戦闘訓練部屋にはGの戦闘訓練を受けるユキの姿があった。

 教わった突きや蹴り技を次々と繰り出すユキに対して、ボンゴレボスの右腕は眉一つ動かさずにかわしている。

 そしてかわすと同時に顔面に向かって放たれた掌底が、避けきれなかったユキの顔をかする。

 火傷のような痛みに顔を歪めるユキに、Gは厳しい声を飛ばす。


『相手との距離を正確に測れ!接近戦では間合いが何より大事だってことを理解しろ!』

『はぁっ…は、ぁっ……はい!』

『よし、もう一度だ。今度は自分の攻撃が届く範囲を意識してやってみろ!』

『はい!』


 再び戦い始めた2人を部屋の隅で見守るのは、雲と霧の守護者以外の4人だ。 床に直接座り、コーヒーと茶菓子まで用意してちょっとしたピクニックのように見える。

 狩衣姿できちんと正座してコーヒーを飲む雨月が、微笑ましそうにユキを見て言う。


『まだまだだが、最初に比べれば見違えたでござるな』

『そうだな、全然ダメだが途中でへばることもなくなったしな。ナックルのトレーニングメニューがいいんだろう』

『うむ。究極の体力強化のメニューだからな!1%の力も出してないG相手に一撃も当てられていないが、まぁ今はこんなものだろう』

『まぁまともな組手を3時間続けられるだけ成長したんだものね。あ、今ので1457回死んだ』


 なかなか味噌糞に言われてはいるが、この数ヶ月でのユキの体術レベルは格段に上がっていた。

 一対一ならボンゴレの部下レベルのマフィアが相手でも傷ひとつ追うことなく倒せるだろう。

 だが、多人数を相手にするのはまだ厳しい。ユキ自身が複数のマフィアと対峙しても自分の身を守れるほどの戦力を求めているため、体術の師であるGは相応の厳しさを持って修行にあたっている。


『射撃の訓練も順調のようだし、そろそろ武器の修行を始めても良いのではないか?雨月』


 ナックルに問われて、雨月は考えるしぐさをする。


『そうでござるなぁ。ユキには使いたい武器があるようだが、とりあえず対武器の修行から始めるつもりでござるよ』

『ユキがマフィアとしての任務に出られるようになるのも時間の問題だものね』

『そのことなんだが、夕食後に会議をやる』


 ジョットは溜め息のようにそう言って、コーヒーを流し込む。

 不思議そうな顔をしている3人と、戦い続ける2人を眺め、もう一度長い溜め息をついた。










『面倒なことになりそうなんだ』







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