アンバー ウーマンズ ウォー 3
まったく。いくら家族間とはいえ、こんなに口が軽くてよくマフィアをやっていられるものですねぇ。
『Giapponeseということは雨月様と同郷ということなのかしら』
『でも雨月様はGiapponeでは由緒正しい御家柄と聞きますわ。あの娘は身寄りがないからボンゴレが引き取ったのでしょう?』
『初めてジョット様と守護者の皆様全員が出席されるパーティだっていうのに、とんだ邪魔者ですわ』
『そうそう、ナックル様はボクシングでまたチャンピオンでなったとか』
『今日はアラウディ様もいらしてるし、娘を近づけるチャンスですわ!』
『でもアラウディ様って見た目は素敵だけど完全にボンゴレに属してはいないのでしょう?もし離反するようなことがあったら…』
『それが、夫の話ではジョット様は近々アラウディ様に門外顧問という役職を与えるおつもりのようなのよ。G様とはまた別の、NO.2といえる権力を持てる役職だそうよ』
『まぁ素敵!となればアラウディ様に娘を嫁がせても何の問題もないわね』
『守護者の皆様も捨て難いけど、わたくしはやはりジョット様に娘を嫁がせたいわ!あのユキとかいう小娘、馬車から降りるところを見ましたけどたいした女じゃありませんわ』
『その通りよ。わたくし少し話したのですけど、言葉をどこまで理解できていたのか怪しいものでしたわ。ジョット様も外国人が珍しいだけで、気まぐれにパートナーに選んだのでしょう』
門外顧問の話がもう伝わっているとは。さて…あのご婦人はどこのファミリーの妻だったでしょうね。
女性専用のラウンジで話に花を咲かせる集団を眺めながら、幻術で自分の姿を見えないようにしているDは手に持った資料のページを繰った。
口の軽い者に重要な仕事は任せられない。
そういった理由から、パーティの時に招待客の妻や娘の話を盗み聞くのはDの仕事の1つであった。
といっても幻術が使える部下に任せている仕事なのだが、今回はD自らが請け負った。
ユキのこともあるが、これを機にボンゴレに不利益をもたらしそうな同盟ファミリー幹部を切ってしまうと考えていたのだ。
門外顧問の話題を出した女をリストと照合し終えたDは、ラウンジの中のもう一つの集団に目を向けた。
こちらは娘達の集団で、母親よりもかなり直接的な会話を繰り広げている。
『異国人だからそれなりに美人に見えたけど、金髪でもないし青い目でもないし、ぜんっぜんたいしたことなかったわ』
『ドレスの作りも地味だったし。ジョット様の見立てって聞いたけど、あんなドレスを見立てられているようじゃジョット様の寵愛もそれほどじゃないのよきっと』
『ジョット様と同じ屋敷に住んでいる時点でただの慰み者でしょ。私達みたいに妻の立場になれる者とは違う、卑しい女なのよ』
『拾った女をジョット様が妻にするはずないじゃない。お母様も言っていたけど、あの女をパートナーにしたのはただの気まぐれよ』
『このパーティで絶対ジョット様の目を覚まさせてみせるわ!』
『ジョット様はもちろん第1希望だけど、今日はアラウディ様がいらしてるし、私はそっちも頑張ってみるわ』
私はG様、私はランポウ様、私はD様と自分達の好みの話に変わったため、Dは資料への記入を止め、ラウンジを出る。
マフィアの結婚は貴族のそれとは違う。家柄などにたいした意味はない。
代々続くマフィアの家系ならば遺伝としてあるかもしれないが、必要なものはマフィアの女としての度量だ。
器量や資産ではない。それがわからない愚かなあの娘達を、ジョットは歯牙にもかけないだろう。
(ユキ。貴女の相手はあの小娘達ではありませんよ)
彼女に待っている、パーティという名の煌びやかな試練のことを思い浮かべながら、Dは資料をジョットに届けるためボンゴレボスの控室を目指した。
後にボンゴレの伝説のひとつとなるパーティの開始まで、あと数刻。
(ヌフフフフフフ……)
(!? 今、なんか変な笑い声が…)
(? 誰もいないぞ。馬鹿なこと言ってないでさっさと料理を運べ。パーティが始まっちまう)
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