恋物語パーティ編 | ナノ


アザレ エゴイズム 2







 一週間後……





『ユキの発音、だいぶ綺麗になったでござるよ』

『本当?よかった!』


 目を輝かせるユキに、雨月は微笑みを向けて頷いた。

 実際ユキのイタリア語の習得スピードはとても早く、たった3ヶ月で日常会話は心配いらないほどになってしまった。

 今では難しい言い回しも綺麗に話せ、文章を書く方も簡単な日誌や手紙ならば全く問題ない。

 興味のある分野なら習得は早いというが、日頃の家事や戦闘訓練をこなしながらで、よく体が持つものだと感心してしまう。

 見た目こそ細身で女性らしい体つきだが、トレーニングのおかげかしなやかな筋肉もついている。

 それでいて柔らかそうな印象が薄れないのは、彼女の笑顔が風のようにふわりとしているからなのだろう。


『これなら、明日も大丈夫そうでござるな』

『明日?』


 きょとんとするユキに、雨月は半テンポ遅れて同じ顔を向ける。





 どうやらジョットは、明日の主役ともいえる彼女にまだ何も告げていないらしい。


『明日、ボンゴレの本部でパーティがあるでござるよ』

『へぇー。なんか凄そうだね』

『へぇーじゃないぞ、ユキ。お前も出るんだからな』


 静かにドアが開くと共に、ジョットの滑らかな声が部屋に響く。

 ジョットはそのまま真っ直ぐユキの元へと歩み寄り、挨拶代わりのキスを額に落とした。

 最初の頃よりは慣れた様子だが、それでも恥ずかしそうに額を押さえるユキに、ジョットは最上級の笑顔を浮かべた後ユキの手を取って椅子から立ち上がらせる。


『ボンゴレの関係者及び同盟ファミリーのトップが集まる大規模なパーティだ。お前のことも紹介するから、部屋に戻ってドレスを選べ。いくつか見繕って部屋に運ばせてあるから』

『え?ちょ、っそんなの聞いてないよ!?』

『今言った。俺は雨月に話があるんだ。早く行け』


 蕩けそうな笑顔のまま、有無を言わせない口調でジョットはユキを部屋から追い出した。

 渋々といった様子でユキがドアを閉めると、ジョットはさっきまでユキが座っていた雨月の向かいのソファに腰を下ろした。


『雨月、茶が飲みたい。UMEKOBU茶がいい』


 日本が大好きな友のために、雨月は笑顔で頷いて茶器に手を伸ばす。

 ジョットに先ほどまで浮かべていた笑顔はなく、難しい顔をして眉間に皺を寄せている。





 今回のパーティは同盟ファミリーであるキャバッローネが提案してきたものだった。