ヘブンリーブルー デルフィニウム レディ 1
ヘブンリーブルー デルフィニウム レディ
『ボスぅぅぅぅぅっ!!』
『ぅぐっ!!』
ユキをベッドに寝かせた後Gの部屋へ向かいドアを開けたジョットは、8割以上タックルと言える抱擁を受けて背中を反らせた。
転倒しないようなんとか体勢を保っているジョットにはおかまいなしに、ランポウは泣きじゃくりながらジョットに抱きついている。
『よかったぁぁボスぅぅぅっよかったんだものねぇぇぇっ!』
『ランポウ…顔中で泣きすぎだぞ。うるさいのはお前の技だけで充分だ』
『酷いボス!すっごくいい笑顔なのに言葉が酷すぎるんだものね!』
『まぁまぁ2人共。だが、よかったでござるなプリーモ』
『雨月。そうか、皆もう知ってるんだな』
ジョットは雨月の方を向いて苦笑いを浮かべる。
Gの部屋には守護者全員が揃っていた。日頃のアラウディやDの行動からは考えられない状況だが、全員今日のことを気にかけていたのだろう。
『君の右腕がにやにやしてたから結果はすぐにわかったけどね』
『誰がにやにやしてただコラァ!!』
『笑いたければ素直に笑えばいいんですけどねぇ。堪えているつもりなのか口元がぴくぴくぴくぴくと気持ち悪いことこの上ない…ヌフフフフッ』
『うるせえぇっ!!』
ユキを部屋まで迎えに行ったGは、ユキの格好を見て彼女のやろうとしたことを察したらしい。
右腕としてはジョットかユキの口から語られるまで隠しておきたかったのだろうが、嬉しさが勝った所為で守護者達に感づかれてしまったのだという。
ユキが絡むと、己の守護者が今まで見せたことのない姿を見せるのでジョットは複雑な気分になるが、口ぐちによかったよかったと言う雨月とランポウとナックルを見ていると、つい笑みが浮かぶ。
ジョットはユキが部屋に来てからのことを、守護者達に語った。
ユキが示した覚悟を受けて、自分達も相応の態度で彼女と向き合うようにと念を押す。
『となれば戦闘訓練も本格化せねばな!』
『お前は基礎を見ろ。実戦は俺が教える』
『教育係として、私もボンゴレの全てをユキに語るでござるよ』
『俺も、もうちょっと仕事頑張るんだものね』
『僕には関係ないよ。僕はユキを甘やかしたことなんてないからね』
屋敷の中に以前の明るさが戻ったような気がして、ジョットは安堵する。
尤も、自分が屋敷を暗くしていた最たる人物であることは自覚しているが。
『おや』
すると、何気なく壁にかかった暦を見ていたDが声を上げる。
たまたま会話が途切れたタイミングだったため、全員がDに視線を向ける。
Dはその視線を意識した動作で腕を組み直すと、にっこりと微笑んで見せた。
『いえたいしたことではありませんよ。今日はユキの誕生日だな、と気付いただけです』
そう告げたDは、ぴたりと動きを止めたボスと守護者達を見渡し、優越感たっぷりの笑顔を向ける。
『くだらない話の副産物ですね』
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