恋物語忠誠編 | ナノ


サンシャインイエロー エマージェンス 1





サンシャインイエロー エマージェンス








 謹慎となった一週間の間、ユキは本当に一歩も部屋から出ることはなかった。

 風呂や手洗いなどは部屋についていたし、食事は毎回Gが部屋の前まで運んだ。

 ジョットが禁じたわけではなかったが、守護者の誰も、ユキの部屋に入ろうとはしなかった。

 ユキが食事は部屋の前に置いておいてくれと言った時、察したのだ。



 謹慎が解けるまで、ユキは自分達に会うつもりがないのだと。



 一度だけ初日に、ユキに呼ばれたと言ってアレッシオがやってきた。部屋についてある電話で呼んだらしい。





 屋敷は、少し暗くなった。文字通り、Gはそう感じた。

 皆口数が減り、アラウディやDは部屋で食事を取ったりしていた。

 それはユキが来る前はよくある光景だったはずなのに、どこか以前より寒々とした風景に思えた。

 会ってはいけないとわかっていても、部屋に篭っているユキのことは気にかかる。

 ナックルはわざわざユキの部屋の窓から見える位置で、大声を上げながらトレーニングをしていたし、雨月も毎夜その場所で笛を吹いた。

 ランポウは部屋に入りこそしなかったが、何度かドア越しに声をかけたらしい。

 元気? 元気だよ。

 そんな程度だったらしいが。



 かく言う自分も食事の皿を下げに行く度、残さず食べられていると安心した。



 一度だけ、皿の上に自分が出した覚えのないものが置かれていた。

 食べ終えた皿の上に林檎の皮。そして紙ナプキンの上に変な形に剥かれた林檎が3切れ置いてあった。

 その林檎は、食堂に持って帰る道のりでいつの間にかなくなっていた。

 誰かとすれ違ったような気がするから、そいつが掠め取っていったのだろう。





 気づかなかったのは、ユキが謹慎後に出す答えについての考えに沈んでいたからだ。





『チッ…』


 ユキの部屋の前に立ち、ノックするのを一瞬躊躇った自分にGは舌打ちをする。

 これからユキをジョットの部屋に連れて行く。

 そこでユキがどんな答えを出しても、ジョットはそれを受け入れるのだろう。


(また、家仕事は俺か…)


 苦だと思ったことはなかったはずなのに、また家事をやるかと思うと胸がちくちくと痛む。





 ああくそ。言い訳すんな。





(あいつが出て行くことを仕方ないと思うことが、嫌なんだ)


 実際仕方がない。それだけのことを俺達はしたんだ。





『…G? そこにいるの?』

『!』


 ドアの向こうからの、一週間ぶりに聞くユキの声に息を呑む。





 あまりにもいつも通りの声で、驚いた。





『あぁ。時間だ』

『うん。行こう』


 柔らかい風のような声を受けて、Gはドアを大きく開いた。