恋物語忠誠編 | ナノ


ヘリオトロープ セルフ ディセプション 3







『それは甘やかしで…逃げだ』


 ジョットは苦く言う。

 ボンゴレに置くと言いながら、マフィアであることの覚悟も教えなかった。

 ユキにボンゴレの…マフィアの業を背負わせることから逃げたのだ。





『何が守ってやるだ…』





 ジョットは自分の右手を見つめる。

 守ってやるどころか、危険な目に遭わせた上、自分の身を犠牲にしようとしたユキに苛立ち殴ってしまった。



 ユキは今何を思っているのだろう。

 傷ついているのかもしれない。

 悲しんでいるのかもしれない。

 危険な目に遭わせた自分には、もう笑いかけてくれないかもしれない。

 ここを出て行きたいと言い出すかもしれない。

 そしたら、できるだけマフィアと関わりのない、且つ安全な場所を用意してやらなければ。




 くっ、とジョットは自嘲する。





 そんなこと、できるのか?俺は…。





 ユキを、手放せるのか…。









『お取り込み中失礼しますよ』

『『!!』』


 唐突に浴室に入ってきたDに、ジョットもGも目を丸くする。

 特に気配を消していなかったDは、ジョットのGの表情を面白そうに見やって、ゆったりした動作で腕を組む。


『ユキからの伝言です。一週間の謹慎の後、貴方と話がしたいとのことです。プリーモ』

『ユキが…』


 ええ、とDは頷く。

 Dの前であるにも関わらず、ジョットがユキを思って顔を歪めていることに気づいたGは、舌打ちをしてDを睨みつける。


『お前、ユキに何を言った?』

『事実しか言っていませんよ。平和ボケした小娘がマフィアで働くなど無謀なこと。プリーモに殴られても当然だ、とね』

『ッ! てめぇっ!』

『やめろG。D、話はそれだけか?』


 Gを諌めたジョットが、腰にバスタオルを巻いて立ち上がる。

 ボンゴレのボスの顔に戻った彼の視線を受けて、Dは笑顔のまま頷いた。


『えぇ。それだけです』

『わかった。下がれ。G、お前もだ』

『……あぁ』





 2人がドアの向こうへ消えていくと、ジョットは静かに目を閉じた。





 今浮かぶのは、ユキのいろんな表情。

 笑った顔、驚いた顔、照れた顔に膨れっ面。

 そして最後に見た、驚きと傷ついた表情。





『お前がどんな答えを出すとしても…』



 俺はどちらにも偏らない。





 ボンゴレのボスであり、そして1人の男として、お前に向き合おう。










(一週間は、短くて…長い)








next サンシャインイエロー エマージェンス