恋物語日常編 | ナノ


ジョンブリアン ギブ ミー 1


ジョンブリアン ギブ ミー








「俺の家だ」


 ジョットにそう言われて示されたのは、貴族の屋敷のような大豪邸で、ユキは眩暈を起こしそうになった。




 慣れた様子で入っていくランポウに手を引かれて足を踏み入れると、華美ではないが頑健で荘厳な美しい屋敷で、思わずキョロキョロしてしまう。

 Gがてきぱきと指示を飛ばすと、数名の部下によって瞬く間に荷物が運び込まれ、空き部屋を整えたというユキの部屋に案内され、人数分のお茶が用意された。

 基本的にボンゴレの事務仕事はここで行い、住んでいるのはジョットとG。

 他の守護者の部屋もあり、出入りは自由だという。

 その代わり、部下に関しては出入りを厳しく制限しているらしい。


「まぁ、この人数しかいないからな。家事は基本的にはGに任せている」


 コーヒーに口をつけてからけろっと言うジョットに、ユキは少しだけGの苦労を感じ取ったが、口には出さなかった。





* * *





 今回の暴動の事後処理があると言って、ジョット達がそれぞれの部屋に戻った後、ユキは自分に与えられた部屋を見渡した。

 ボンゴレの世話になることが決定してから、暴動を鎮圧しここに来るまでの間に、ジョットが部下に連絡して用意させたという部屋だ。

 5人は眠れそうなベッド、柔らかい茶色を基調とした趣味のいい家具、使い勝手の良さそうなデスクと椅子、そしてクロゼットには服がずらりと並んでいた。

 至れり尽くせりというのはこういうことを言うのか、と思うと同時に申し訳なくなってくる。

 自分がタイムトラベルとしたという事実が悲しくて、不安で、ジョットの手を取ってしまったが、この優しさは自分には過分だと感じてしまう。

 この1週間、とりあえず必要なことをしようと、雨月にイタリア語とボンゴレに関しての教えを受けている。

 雨月はこの暴動を鎮圧したら日本に帰るつもりだったようだが、ジョットの頼みで帰国を延期したのだ。

 そこまでしてくれたのだからと、ユキは熱心に学んだ。まだ1週間だが、少しずつ言葉を覚えることができてきたと自分では思っている。





 それでも…





「何か、私にできることは…」


 そう呟いた後、クロゼットの中にあった服を適当に見繕って着替えたユキは部屋を出る。

 眩暈を覚えそうなほど長くて広い廊下を歩き、教えてもらった部屋のドアをノックする。




 少しの間の後、ドアを開けたのはユキの予想と違う人物だった。







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