恋物語日常編 | ナノ


カーマイン ボス 2







 根拠も何もないと言われればそれまでのジョットの直感を、Gだけは絶対大丈夫だと言い、実際その通りになってきた。

 ユキを拾ったのも直感が決めたことだろうと思っているから、Gは何も言わなかったのだとジョットはわかっていた。





 ただDやアラウディにユキを渡したくない。

 そんな思いもあったとしても。





 そして、Gが信頼を寄せるジョットの直感はこう言っていた。

 ユキは自分にとって絶対的な存在になるだろう。

 それはボンゴレにとってなのか、ジョット個人にとってなのかはわからない。

 ユキは、世話になる以上迷惑はかけられないという感情で動いている。

 だからイタリア語を習い、家事をする。もしかしたらそのうち護身術を身につけると言いだすかもしれない。

 ただ与えられ、守られる。そんな自分は許せないと思う女なんだろう。





 出会ってまだ一週間だ。


 美人で、よく笑い、まじめで、強い。





 あぁ、なるほど。





 ふっと笑いを漏らした時、遠慮がちに通常用の扉がノックされる。

 立ち上がったGがドアを開けると、シャツの袖を肘まで捲り上げたユキが立っていた。


「あれ、Gもいたんだ。ジョット。ごはんができたから呼びにきたんだけど…」

「あぁ、Gから聞いたところだ。ユキは言うことを聞かないな、って話していた」


 意地悪く言ってやると、ユキは眉を下げて下を向く。

 苦笑しているGの横に立つユキに近づき、さらりと流れる茶色の髪に触れる。

 そのまま頭を軽く撫でてから、廊下に出る。

 振り向いて、少しくしゃりとなった頭のユキに笑いかける。


「今日からこの家で雑用として働いてもらう。だがイタリア語の勉強も怠るなよ。自分でやりたいと言いだしたんだからな」

 するとユキは髪を直す手を止め、ぱぁっと顔を輝かせた。



 やっぱり可愛いな、と緩みそうになる口元を慌てて引き締める。

 笑いを堪えるGを肘で小突いてから咳払いをする。


「困ったことがあれば遠慮せずに言うんだぞ。お前も、もうボンゴレファミリーなんだからな」

「うん! ありがとうジョット!」


 自分は今まで、簡単なことから目を背けていたのかもしれない。

 引き取った以上ユキはもうボンゴレファミリーで、本人もそれを望んでいる。

 だったらボスである自分にできるのは、ファミリーを守ること。

 ユキの希望を聞いてやり、守ってやることだ。

 新たな地で、新たな人生を、自分の足で歩もうとしている新しい仲間を、守ってやることだ。










 それに気づけて、よかった。








(ユキの作った夕食か。楽しみだな)

(ランポウくんに笑われた…)

(は?お前何作ったんだよ)








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