恋物語日常編 | ナノ


ジョンブリアン ギブ ミー 2








「あれ?雨月」

「もう道に迷ったのか?ユキの部屋は3つ先でござるよ」


 からかうような言い方に、ユキは唇を尖らせる。


「違いますー。Gに用事なんですー」

「2人で何をやってんだ? 突っ立ってないでユキも入れ」


 部屋の奥にいたらしいGに迎えられ、ユキは部屋に足を踏み入れる。

 Gの部屋は物が少なく、飾りがない。唯一、部屋の一角に銃となぜかアーチェリーが並んでいる。

 テーブルには雨月の持参らしい日本茶が湯気を立てていて、雨月が新しい湯呑にユキの分を注いでくれる。

 革張りのソファに座るよう促され、雨月の隣に腰を下ろす。


「で、何か足りないものでもあったか?」

「ううん!全然ないです。っていうか、ありすぎて困ってるっていうか…」


 首を振って否定した後、肩を落とすユキに、Gと雨月は怪訝そうな顔を向けた。

 ユキは慎重に言葉を選びながら、この1週間雨月との勉強以外は部屋でゴロゴロするだけだったことと、何の役にも立っていないのに豪華な部屋や服を当然のように用意させているのは気が引けるということを説明した。


 Gは熱い日本茶を一気に飲み干してから、面白そうにユキを見る。


「ただ与えられるだけは落ち着かないってことか。考えは立派だが、それは俺じゃなくてプリーモに直接頼んでみろよ」

「いや、それが…」


 ジョットはこの一週間、忙しい仕事の合間を縫って一日一回はユキと話す時間を作り、マフィアのことやイタリアのことを話してくれていた。

 その時に、何か手伝えることはないかと何度か尋ねてみたのだが、その度に笑って「お前は気にしなくていいんだ」と言われてしまった。


「勝手な予想だけど、ジョットって家事苦手でしょ」

「勝手な予想だが、当たりだ」


 ユキの勝手な予想を、Gはげんなりした顔で肯定し、雨月は堪えきれずに噴き出した。

 ジョットの壊滅的な家事能力は見るに堪えない。自警団を始めてから、Gは何かと言いくるめて家事を一手に請け負ってきた。


「ジョットは家事のことはGに任せておけばいいって思ってるみたいだけど、Gだってボンゴレの仕事があるでしょ。だったらここに住まわせてもらってる以上、私が家事をやりたいの!」


 昔の機械とかわかんないと思うから教えてもらわなきゃだけど、と苦笑するユキの頭を、雨月はわしゃわしゃと撫でた。


「ユキはいい子でござるな」

「そこまで言うなら、ここの家事はお前に任せてやる。そうと決まったら、早速移動だ。説明することは山ほどあるからな、覚悟しろよ」

「はいっ!あ、ちょっと待って、メモ取れるもの持ってくる!」

「お。ユキ、それなら今日の課題は書き留めを全てイタリア語にするというのはどうでござるか?」

「えぇっ!?それはキツイよ!」

「よかったなーユキ。家事と語学が一度に勉強できるぞ」

「やだってばそんなの!」





 笑いながら廊下へ出ていくGと雨月を追いかけて、ユキは部屋のドアを閉めた。










(晩ごはんは何作ればいいかなぁ?)

(お前の作れるものでいいぜ)

(ハンバーグとかでいいのかな…)








next カーマイン ボス