恋物語カプリ島奪還作戦編 | ナノ


サハラ フォー ユー! 1



 ボンゴレがカプリ島に設置した基地ユニットは、一週間で作ったものとは思えないほど攻めるに難く守るに易い。

 さらに各部隊に数人配置されている術士によって、設置段階からその姿は見えないようにされていたので、奇襲どころか位置を知ることさえできるはずがなかった。





サハラ フォー ユー!








 まさか、自分達の基地ユニットに閉じ込められることになるとは思わなかった。



 ランポウは灯りのない部屋で小さく身じろぎした。

 L基地の中で一番強固に作られてある部屋だ。窓はあったが、捕まってすぐに格子が嵌められた。そんなことをしなくても逃げられるはずはないのだが。

 瞼を開けると、心配そうな部下の顔がぼんやりと映った。先ほどまで半ば拷問に近い尋問を受けていたからだろう。頭の中で鐘が鳴っている。


『大丈夫…だものね……』


 笑顔を作ったつもりだったが、部下の顔が歪んだ。口は動いたが、掠れた声しか出ない。

 右目が上手く開けられず、面倒になって両目を閉じると、部下の一人が『水くらい寄越せ!』とドアに向かってがなり立てているのが聞こえた。

 痛む頭に手をやると、じゃらりと鎖が床を這う音が鳴る。ビルボは…いや、ノヴィルーニオはよくわかっている。ボンゴレを捕らえるのに縄など無意味だ。

 気遣わしげに体を起こされ、紙でできたコップが口の傍に持ってこられた。

 正直飲み下す力はなかったが、唇が湿っただけでもだいぶ楽になった。


『ありがと…だものね……』

『いえ…。何か情報は得られましたか…?』

『現状は…ほとんど変わっていないん、だものね……。ボスは、捕まったままで…リングを持っていると思われるユキも…どこにいるかわからない……』


 自分への拷問も、ユキの行きそうな場所を問うものがほとんどだった。知らないし、知っていても答えないが。

 唇を噛む部下を見上げる。


『他の部屋の…様子、は…?』


 ビルボファミリーに奇襲をかけられたとき、数人の部下だけを連れて囮になった。

 だが逃がした部下達は半分以上捕まってしまい、こことは違う別室に入れられていると聞いていた。

 部下は痛みを堪えるかのように眉を寄せ、緩く首を振った。


『我々の部屋にはカッペッレェリーア直属の人間しか近づけていないようで…。ビルボの人間なら聞き出すことも容易だったと思うのですが……』


 申し訳ありません、と頭を垂れる部下に苦く笑いかける。さすがノヴィルーニオ一の能吏と名高いカッペッレェリーアだ。