恋物語カプリ島奪還作戦編 | ナノ


インディゴ プレリュード 1


《お前も、もうボンゴレファミリーなんだからな》

《ずっと、一生、守ってやるから、安心しろ》

《この馬鹿!!こちら側には入るなといったはずだ!》

《いつまで平和な世界の住民でいるつもりです?》

《ボスが、ヴォルパイヤファミリーを殲滅致しました》

《お前の覚悟…しかと受け取った》

《寂しくないさ。お前がいるからな》

《よく俺を守ってくれた。ありがとう。ユキ》

《マフィアとして初めての作戦参加だな》

《何もするつもりはない。けれど…部屋は別にした方がいい》


《貴女は何が嬉しくて…何が辛かったのですか?》





《次に会った時…話したいことがある》








インディゴ プレリュード








『ユキ!』

『ッ!』


 強めの口調で名前を呼ばれ、ユキはびくりと体を震わせて顔を上げた。

 ぼうっとしていたため焦点が合わない視界に、Dの呆れたような表情が映る。

 考えに沈んでいた…というより思い出の中を巡っていたらしいユキは、数度瞬きした後へらりと微笑んだ。


『ごめんなさい。ほうけていたみたい』


 頭を軽く下げて謝るユキに、Dは表情を変えないまま見ていればわかります、とぴしゃりと言い放つ。

 二人は草原のような場所に向かい合って座っていた。色彩が全体的に白っぽいのと、風が全く吹かないことを除けば夢の中だとは思えない場所だ。

 Dは自分を見上げるユキをしばらく静かに見つめた後、短く息を吐く。

 ユキがまさか夢を通じて自分を呼ぶとは思わなかった。くだらない話として語った内容を律儀に覚えていたのは自分だけではなかったらしい。

 幾度か夢が交わりきらず失敗し、ようやく会うことができた彼女は、開口一番自分に協力を求めてきた。

 これまでのことと、今の状況、そしてこれから行おうとしている計画について。


『それで、私と連絡が取れないままだったら、その格好でカッペッレェリーアの寝室に侍るつもりだったというわけですか』


 ユキが着ているのは薄いピンクがかったサテンドレスだ。

 肩は剥き出しで胸が半分も見えている。体に沿ったドレスというより、体に纏わりついているようなドレス。

 似合っていないわけではないが、お世辞にも上品とはいえない、娼婦の着るような服。

 Gや雨月が見たら気絶してしまいそうな格好のユキは、特に気にした様子もなく頷いた。

 彼女とプリーモが旅行という名目でこの島に先行してから約10日。たった10日だったが、これほど長くユキの顔を見なかったのは初めてだった。

 それでも、たった10日だ。こんな短い間に、彼女は変わった。

 別荘を襲撃され、今いる場所まで敵を退けながらたった一人で進んできたことで、ユキからは今までなかった、実戦を経験した者が持つ空気が感じられた。

 何も怖いことはないと言われて連れて行かれたにも関わらず、別荘は焼かれ、ビルボファミリーに裏切られ、プリーモはカッペッレェリーアの手中。

 それなのにユキはいつものように微笑み、そのいつもの笑顔のままでプリーモを助けるための協力を求めてきた。

 自分に会えなかった場合は、娼婦の格好でいかれ帽子屋に抱かれるのだと、そのままの笑顔で言うのだ。







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