恋物語カプリ島奪還作戦編 | ナノ


ブロンド イタリアン ドリーム 3


《ボンゴレにと思ったんだけど、ジョットは受け取ってくれないし、私が持っていても使い道がないから》


 その代わりっていうもの変だけど、とユキはローザの手から布きれを取り、静かに床に置いた。


《建てる店は娼館はやめよう。皆が働けるように…食堂にもなる宿とか、そういう店にしよう》


 茫然としている女達をゆっくりと見渡して、ユキはにっこりと微笑んだ。


《ここを出てまで、体を売るようなことはしなくていい。私が、私のボンゴレとしての誇りにかけて貴女達を助ける。この金額内でできる限り、治安のいい場所で皆が働ける店を用意する》



 だから約束して。



 そう言うユキに、全員が魅入っていた。








《希望を、持って》





* * *





『かっこよかったですね…あの時のユキ様』


 くすくす笑うカルロッタに、ローザは口をへの字に曲げる。

 カルロッタはあの時のユキの言葉を、本気だと思うか問うてきたが、彼女にだってわかっているのだ。

 ユキはあんな冗談は言わない。

 本気で、ローザ達を助け出したあかつきには、店を用意するつもりでいるのだろう。


『《希望》だって、今更だっていうのよ』


 ローザの言葉に、女達から『まったくだ』と笑い声が上がる。

 本当に今更な話だ。

 ローザ達はもうすでに《希望》を持っている。





 ユキという名の《希望》。





 彼女と、彼女が信じるボンゴレが、自分達を救ってくれると信じている。








『…ッ。ローザさん!』


 突然カルロッタが悲鳴に近い声を上げ、ローザはびくりと体を強張らせた。

 何事かと、カルロッタに視線が集まる。


『ユキ様が…』


 慌てて膝の上のユキを見下ろし、ローザはさっと青ざめた。

 ユキの髪の色が変わっている。

 さっきまで、あたたかい濃い茶色だったのに、今は艶やかな黒髪になっている。

 触れると凍えてしまいそうな、冷たい黒だ。


 慌てて起こそうとすると、肩をゆする前にユキがぱちりと目を開けた。

 その瞳が鮮やかな青に変わっていて、ローザは短く悲鳴を上げた。


 異様な事態だ。

 それはわかっているのに、どうしたらいいのかわからない。




 ユキがゆっくりと体を起こした。

 上半身を起こした状態で、周りを見回し、彼女は…微笑んだ。





 とても、とても楽しそうに…。








『ヌフッ』








(似合わない。そう断言できる、笑い声だった)








next マラカイトグリーン デュランダル