恋物語カプリ島奪還作戦編 | ナノ


ローアンバー マッドハッター 3


 ユキは少年に笑顔を返すと、少しだけ眉を下げた。


『でも、ジョットの気持ちあってのものだからね…。まぁ、ジョットの気持ちがどうであれ、ボンゴレから離れる気はないんだけど』

『何を仰るんですか!ユキ様に好きだと言われて断る男がいるはずありません!』


 胸の前で手を握り締めて断言するファビに、ユキは笑顔で礼を言う。お世辞でも、この少年の言葉は気持ちがこもっていて嬉しい。

 ユキは目を伏せる。瞼の裏に浮かぶのはもちろんジョットの顔だ。今まで見た彼の表情は、数えきれないほど様々で、そのすべてを愛しく思う。





 好きになってくれたらいいのに。





 初めて、願った。

 気持ちを自覚して初めて、心から願った。





『ジョットも、私のこと……』








《恋だったら…いいのにな……》








『…ッ!』


 体中を電流が駆け巡った気がした。

 目を見開いて、頭を抱える。



 あのとき、ジョットは言った。

 そのときは、言葉の意味がわからなかった。彼がどんな思いでその言葉を言ったのか。

 今自分は、ジョットが言った言葉をそのまま、彼に対して思っている。





 彼の、自分への気持ちが…恋だったらいいのに、と……。





 ユキは髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回した。

 酷く混乱していた。そして同時に、はっきりもしていた。


『え? あれ…? ……え?』


 少し離れた場所にある木の枝が、不自然に三度揺れ、ファビが腰を浮かせる。


『ユキ様。偵察からの合図です』


 その言葉に緩く頷いて立ち上がったユキは、未だ頭の中を巡る確信に、目を限界まで見開いた。





『うそ…。……本当に?』








 彼が言ったことと同じことを願っている。
 
 そんな私は、彼のことが……好き。








(並んだ想いに、指先が触れた)








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