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恋物語と三つ華で雛祭りな夜

『ヌハァッ! 私の男雛の顔に傷が! いつの間に…』

『お前この距離でよく見えるなそんなの』

『すまんなD、さっきの7回目の配置替えの際に爪を引っ掻けてしまったのだ!』

『よくも私の顔に傷を…高くつきますよナックル』

『D、お前実はなかなか酔ってるだろう』

『喧嘩しないでよ。そろそろ日付が変わっちゃうから雛人形を片付けないと』

『もう片付けるのかい?』

『当日のうちに片付けないと婚期が遅れるって言われているの』

『初耳でござるな』

『そうなんだ。いつから言われるようになったんだろうね』

『いいんじゃねぇか? まだ片付けなくて』

『えっ?』

『俺様はユキの婚期が遅れても全然構わないんだものねー』

『えええー』

『そうですよ。焦って結婚する必要はありません』

『そうだよ。苦労して並べたものを早々に片付けることはないよ』

『アラウディさんはひなあられを食べてばかりだったと聞いてますけど』

『まぁそんな気にするな、ユキ』

『ジョット…』

『ここに座って、今日はゆっくりしよう。大丈夫、お前の婚期は俺が決めてやるから』

『うん……うん? どういうこと?』

『今日の酒は美味いな』

『ジョット、ご機嫌だね』

『あぁ』





 婚期はジョット次第。





* * *





「何ィ!? 今日中に雛人形を片さねぇと鈴の婚期が遅れるのか!」

「いや自分に限らずそういう風に言われて…まぁ迷信だと思いますが」

「しかし、そうなると酒盛りはここでお仕舞いだね」

「え、弓親さんなんで急に真面目な顔になってるんですか?」

「ちっ。仕方ねぇな」

「え。隊長なんで杯置いてるんですかまだ足りないですよねそうですよね?」

「鈴の婚期をこれ以上遅らせちゃいけねぇ。てめえら、さっさと片付けて飲み直すぞ」

「おっし、さっさとやろうぜ」

「これも鈴のためだからね」

「やちる様、自分は愛されているんでしょうか?」

「んー。責任を感じてるんじゃないかなぁ」

「十一番隊に入ってからお前はかなり女から遠ざかってるからな」

「あ。阿近さんいつの間に」

「土産だ。涅局長特製ちらし寿司」

「謹んで遠慮させていただきます」





 食べたらますます婚期が遅れそうです。





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