テラコッタ コンタクト 1
テラコッタ コンタクト
数十メートル離れた細い路地の隙間から、ちらりと見えた淡い配色。
土煙の間から、ワンピースを翻して走る、細い脚が見えたときは、街に住む一般人だと思った。
ランポウたちの部隊には、最優先で住民の避難を完了させろと厳命し、それは果たされたと聞いていた。
だが、取り残された人間がいたのだと、慌てて車を降りた。
Gとアラウディと共に、数発の発砲音を聞きながら角を曲がると、地面に倒れ込む女性と、銃を向ける敵ファミリーの姿が目に飛び込んできた。
『大丈夫か?』
へたり込んでいる少女に声をかける。
少女と言うには大人びている気がした。成人したばかりといったところだろう。
警戒するように自分に向けてきた顔を見て、ジョットは眉を寄せた。
濃い茶色の髪と、同じ色の瞳のその女の顔は、どう見てもイタリア人ではなかった。
『Giapponese《日本人》か?』
膝をついて問うた途端、女はがばりと立ち上がり、怪我をしているとは思えない速さでジョットと、後ろに立つGとアラウディの横をすり抜けた。
まさか逃げるとは思っていなかったジョットは慌てる。
『アル!』
「きゃっ!!」
ジョットがアラウディを呼ぶと同時に、女の短い悲鳴と地面にスライディングしたための土埃が舞った。
女の手足に手錠が嵌められているのを見たジョットは、ぎろりとアラウディを睨み付けた。
『手荒な真似はするな』
『こうして欲しかったんだと思ったけど?』
違ったのかい?と口元に笑みを浮かべて言われ、ジョットは押し黙る。
アラウディの手錠が一番彼女を傷つけずに捕獲する方法だと判断したのは確かだったから。
ジョットは今一度膝をついて、うつぶせに倒れている体を起こして、楽な体制を取らせてやった。
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