恋物語出会い編 | ナノ


テラコッタ コンタクト 2






 女は怯えと、不安と、挑むような光を湛えた目でジョットを見据えていた。


「逃げ…ないでくれ、お前を、傷つける、つもりは、ない」


 一言一言区切って言うと、大きな目がみるみる驚きに見開かれていく。


「日本語、話せるんですか…?」


 返ってきた言葉に、自分の言葉が通じたことに安堵して、思わず口元が緩んだ。

 女の肩に触れると、一瞬ぴくりと強張らせたが、徐々に力が抜けていった。


「俺はジョット。こいつらは俺の仲間だから心配しなくていい。…名前は?」

「ユキ、です。 あの、ここどこなんですか?本当に、イタリア…?」


 予想外の問いにジョットは目を丸くする。

 ユキが町の住民ではないことはわかったが、ここがイタリアかどうかを問うとは、どういうことなのか。

 Gとアラウディを仰ぎ見ると、2人も困惑した表情を浮かべている。

 重ねて質問すべきか逡巡したが、ユキの怪我と、遠くで未だ響いている発砲音のことを考えると、それをすべきではないとジョットは判断した。

 足の怪我に触れないように注意しながら、横抱きに抱えると、「わ!」と声が上がる。

 手足に手錠がついたままだったので、外せの意味を込めてアラウディの方を見る。

 アラウディは意図を読み取って、呆れたようにジョットを数秒見つめた後、手の手錠だけ外した。


「安全な場所に移動する。俺の仲間に日本人がいるから、そこで話を聞こう。すぐ着くから、ちゃんと掴まってろ」

「あ……はい」


 胸にぴったり顔を寄せ、シャツを掴むユキの手は、小刻みに震えていた。

 よほど怖かったのだろう。安心させるように、抱える手に力を込める。





 そのせいかはわからないが、ユキは安堵したように息を吐き、目を閉じた。










(この人…とてもあたたかい)








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