グラファイト バン バン 1
グラファイト バン バン
『ボス、そろそろ着くぜ』
肩を緩やかに揺すられて、ぼんやりと覚醒する。
声をかけてきたのが運転席に座る幼馴染だと気づき、ジョットは軽く眉を寄せた。
『その呼び方はよせ、G』
嫌そうに声を低めるジョットを見て、Gとジョットの肩を揺すった雨月がくっくっくと笑う。
自警団を立ち上げて幾年月、名実ともにボンゴレファミリーのボスとなったジョットだが、身近すぎる自分の守護者にまで恭しくボスと呼ばれたくないと言う思いが、全身から滲み出ていた。
『今から戦場に行くってのに居眠りこいてた罰さ。残党狩りだからって気を抜くな。しゃきっとしろ』
右腕の叱咤に、ジョットは頷いて座席に座り直し、窓の外を見る。
最近傘下に加わったファミリーの管轄地域で起こった、1つの町を完全封鎖しての立てこもり事件。
ボンゴレに加わる派と、加わるべきでない派の争いを解決させないまま、ファミリーのボスが加入を強行したために起こった事件だった。
だが1ファミリーの半数という人数が相手のためと、ボンゴレの名のもとの鎮圧でなければならないという理由から、ボスと守護者全員が出向くことになったのだ。
『わかってる。アル、お前もそろそろ起きておけ』
3列目の後部座席で寝ていたアラウディに、ジョットは声をかけた。
席を全て占領して横になっていたアラウディだが、深い眠りに落ちてはいなかったのか、無言でゆっくりと起き上った。
『しかし、よくこの中で眠れるでござるな』
雨月の苦笑に、Gも賛同する。
ランポウたちが待つ町の中心へと向かう車の周りは、まだ銃撃の音が絶えなかった。
装甲車レベルの素材でできたバンなので、流れ弾などものともしないとはいえ、音は十分に煩い。
敵側はまだ士気を失っていなかったが、ボンゴレが送り込んだ部隊は強く、ジョットはほとんど心配していなかった。
再び襲ってきた眠気を振り払うつもりで数度瞬きをするジョットの目に、ちらりと何かがかすめた。
『よし、着いた『止めろ!!』 は!?』
目的地であるホテルを見つけたGの頭を、ジョットは力任せに引っ掴み、その耳元に向かって叫んだ。
ブレーキが踏まれ、急停車したバンから飛び出るように降りながら、ジョットは呆気にとられている守護者たちに向かって叫んだ。
『Gとアルは着いてこい!急げ!』
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