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ファビオ&コザァートルート 2/2


【ユキ

 やぁ。このカードは無事にハロウィン当日に着いているだろうか?まぁボンゴレの郵便係は優秀だからそれほど心配はしていないよ。

 ユキがいつか手紙で教えてくれたハロウィンパーティというものを、俺もやってみたくなったんだ。

 きっとジョットもそうだろう。あいつは楽しいことが好きだからな。そして俺もそうなんだ。

 うちのファミリーの子ども達に怒られそうだが、これをハロウィン当日に届けたいから、俺だけ先に変身だ。どうかな?

 ユキやジョットがどんな仮装をしているのか気になるよ。きっとそちらでは楽しい時間を過ごしているんだろうね。


 返事が楽しみだよ。じゃあ、短いけれどこれで。



 いつか一緒に海に行こうよ  コザァート】



 カードの裏に書かれた文章に、ユキはふわりと微笑む。封筒に入っていた写真を見ると、肘のところで絞られたシャツとズボン、眼帯をつけ大きな帽子を被って海賊の船長になったコザァートが楽しそうに笑っていた。

 まだ見ぬ友人と同じ時間を共有できていることが嬉しくなり、ユキは大切にカードと写真を封筒に戻す。

 そしてファビの手を取って屋敷の中に入るように促す。


『どうぞ入って。一緒にジョットに手紙を届けて、その後皆で写真を撮ろうよ!』


 ファビは一瞬迷ったように薄い青の瞳を泳がせたが、なぜが意を決したような顔になってユキの手をぎゅっと握る。


『あ、あのユキ様。……Dolcetto o Scherzetto《お菓子くれなきゃ悪戯するぞ》!』


 突然叫んだ少年に、ユキはきょとんと目を丸くしたが、すぐに意味を理解して笑顔になる。

 ユキが知っているハロウィンは、子ども達が家々を回ってこの言葉を叫び、お菓子をもらうのだ。ここはイタリアだし、町から離れたこの屋敷では無理だろうと思っていて忘れていた。


『えっと、ちょっと待ってね。…あれ?……あ、れっ?』


 ユキは着物の袂を探り、困ったように眉を寄せた。トカゲの形のクッキーや髑髏の形のキャンディをしまっておいたはずなのに。


『ごめんなさいファビ。お菓子はキッチンに行けばたくさんあるから…』

『つまり、今は…持っていないんですね?』


 大きな目に見つめられて、こくりと頷く。少年がつけている狐の耳と尻尾がますますぴんと立っているように見えた。

 ユキの手を握ったファビは、頬を赤くして彼女の目を覗き込んだ。





『い……悪戯しても、いいですか?』





 なぜか必死な様子の少年に、ユキはぷっと吹き出し、くすくすと笑う。



 思わぬ来客は可愛らしい仔狐で、彼は友人からの手紙を急いで届けに来てくれた。

 そんな彼に、化かされてもいいかもしれない。

 そう思い、ユキはファビに向かって腕を広げた。





『いいよっ。どんどこい!』








 最上級の笑顔を浮かべて言ったのに、薄い金の仔狐は、なぜか泣きそうな顔をした。








まだ彼女を化かすには幼くて……








(そんな顔をされたら、何もできるわけがないじゃないですか…)





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