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「三日後に呼ぶから来い」 最後にそれだけ言われ、名残惜しそうに局員達に手を振られて、鈴は技術開発局を後にした。 十二番隊の隊舎を出てから、そういえば十一番隊はどこにあるんだろうと首を捻ったが、自分に向かって手を振りながら歩いてくる弓親が視界に入ったから、心配はなくなった。 迎えにきたよ、と微笑む弓親に礼を言って、並んで歩き出す。 今は三時の稽古中で、全員道場にいるとのことだ。 十一番隊は一番の武闘派だと聞かされ、少し意外に思った。弓親はどう見ても戦闘狂には見えなかったから。 そう言うと、「僕は美しく戦うのが好きなんだよ」とにっこりされて納得した。 「うちの隊長は鈴のその霊圧に興味を持ってる。隊長自体は教えるのが上手いってわけじゃないけど、十一番隊で修行すればいやでも伸びるよ。耐えることができれば、ね」 脅すような言葉を選びながらも、弓親は少し心配していた。 霊術院で学んだわけでもない鈴を、いきなり十一番隊で鍛えることは酷なのではないか、と。 冷静で、一見青年に見える容貌ではあるが、彼女はまだ18歳の少女だ。 弓親の言葉を静かに聞いていた鈴は、困ったような笑みを浮かべた。 「虚がどういうものであるかを、技術開発局で聞きました」 なぜ虚が生まれるのか、なぜ虚は魂魄を襲うのか、なぜ死神は虚を斬るのか。 十三隊に入るかどうかは別としても、自分の身を守る力は身につけなければならない。 そうしなければ、やられる。 ただ自分がやられるだけならいい。 鈴が嫌だと感じるのは、自分がやられる過程やその後で、自分の周りの人に被害が及ぶことだ。 力をつければ、迷惑をかけずに済む。 自分のように、虚に殺されて死んでしまう人間を減らすことができる。 そのためには、修行に耐えなければいけない。 「きっと、できます」 その静かな声音を聞いて、弓親は自分の心配が杞憂であったことを悟った。 この子は賢く、優しく、気骨のある少女だ。 助けよう、と思った。 彼女の力になり、甘やかさず、鍛えよう。 弓親は立ち止まり、目の前の扉へと鈴を促した。 「さぁ着いたよ。我らが十一番隊にようこそ」 鈴は小さく頷いて、鋭い声が飛び交う道場への扉を開けた。 (開けた瞬間、隊士が一人飛んできた) |
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