翌日。男はあっさりと私の前に現れた。
花売り娘はカトレアに出逢う
「いくらだ?」
顔を上げると、眩しさに思わず目を細めた。
目の前に太陽が現れたような、そんな輝き。
雑貨屋の前の石段に座っていた私が影を求めて目の上に腕を掲げると、男はくすっと笑ってしゃがみ込んだ。
初めてまともに顔を見た男は、太陽のような金髪と、夕焼け空のようなオレンジの瞳を持っていた。
「やっぱり。昨日の子だ」
ふわりと微笑まれて、顔がかあっと熱くなる。
綺麗な人だと思った。
男の人だけど、綺麗だとしか思えなかった。
「ボス!」
声に反応して男が振り返ると、通りを挟んで反対側にスーツ姿の男が立っていた。
通りの向こうの男は何事か話していたが、金髪の男が軽く手を振ると、恭しく頭を下げて去って行った。
「ボス…なの?」
疑問が口から零れた。
金髪の男は私の方に向き直ると、先ほどと同じふわりとした笑顔を浮かべる。
「まぁ…そうだな。それより、昨日は無事に帰れたようでよかったな。念のため部下を見張りにつけておいたんだが」
その言葉にぎょっとする。昨日はあの後まっすぐ家に帰ったが、街の外れにある家に着くまでの道のりで、誰かに見られているなど露程も気づかなかった。
【ボス】は驚いている私を見て口をへの字に曲げた。
「お前みたいな子どもを一人で帰せるわけないだろう」
そう言って、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
実際年齢より下に見られることが多いが、これでも14歳なのに。
14歳は…子どもか。
「昨日も思ったんだが、初めて会うよな?」
こくりと頷いて、最近この街に来たばかりだと言うと、納得したような表情が返ってきた。
「それで、いくらなんだ?」
また会えた【ボス】は、もう一度私にそう尋ねた。
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