暗い暗い闇の中、わたしの先を歩く音也。そんなに離れていないはずなのに、いくら走っても手を伸ばしても決して届くことがない。

立ち止まったって叫んだって何をしたって音也に触れることができない。どうしたらいいの?しゃがみこんで静かに涙を流す。

「キミの想いが足りないんだよ」

顔をあげれば先にいたはずの音也がいた。どうしてだろう、こんなに近くにいるのにその顔はぼやけていてはっきり見えない。

「わたしはこんなに音也がだいすきなんだよ?」
「それだけじゃ足りないよ。キミには未練があるから。そんなんじゃいつまでたっても俺には追いつけないよ?」

ヒントはここまで。とでも言うかのように音也は再び歩き始めてしまった。

でもそれはわたしには十分すぎるヒントであった。わたしの1番の幸せは音也のそばにいることだった。例えそれが、別の世界であっても。

「音也!」

今までにないくらいの大声で呼び止める。まだ顔は見えない。

「音也から離れたくない!どこまでもずっとずっと一緒にいて!」

その瞬間闇が晴れ、眩しいほどの光に包まれた。

「断ち切れたんだね。待ってたよ。離すもんか、同じことは繰り返さないよ」

音也にふんわり抱きしめられる。やっとだいすきな笑みとともにその顔が見えた。

わたしたちの永遠が始まった。

みんな、さよなら。

今までありがとう。




眠り姫は
静かに微笑み、
永遠の眠りについた。


2014 4 12 fin.