jojo | ナノ
コーンポタージュに浸かってからの話

チョコラータが解体して診察台に散らかしっぱなしの死体を片付けるのがナマエの仕事だ。ぐちゃぐちゃに捌かれた実験体はいつ見ても無惨なものだが、ナマエは片付けをしている時一度も顔色を変えない。死体の臭いが鼻をつこうと、ナース服が血液で汚れようと眉一つ動かさなかった。真っ白な顔はいつも無表情で青紫の唇はいつも真一文字に結ばれている。もしかしたらコイツも死体なのかもしれないと時々思ってしまうくらいにナマエという女からは生気を感じられなかった。本人の前では口に出さないけど前に観たB級ホラー映画に出てくるゾンビに似ているから俺はナマエをゾンビと心の中で命名した。我ながら大したネーミングセンスだと思う。

チョコラータに聞いたところナマエは拾い物なのだと言っていた。飛行機事故でほぼ死にかけてたところをオレが助けてやったんだ、その時に手遊びで脳味噌をちょっといじくったら今みたいな動く人形になってな、愛想も無い女だが死体処理の助手にはもってこいだろォ〜?
自慢げにゲラゲラ笑いながらチョコラータは言っていたがどこまでがホントの話なのか怪しいところだ。経歴を喋らせたら毎回全く違うことを話し出すくらいだからあのゲス医者の話は信用ならない。


「なぁにセッコ」

俺が見ているのに気付き、キャスター付きの台を押す手を止めるナマエ。台には白いシーツがかけられているが、隙間から真っ赤な肉塊と化した死体が覗いていた。
犬か猫の真似をしてナース服から伸びる細っこい脚に擦り寄ればゾンビがガクンと首を傾げた。

「甘えてもダメよ。角砂糖ならさっきセンセイから貰っていたでしょう」

抑揚の無い声でそう言って俺を叱る。お前勘違いしてんじゃねぇぞ俺のほうがお前より立場は上なんだからな。角砂糖はほしいけど。
うううっと抗議の意を込めて唸ればゾンビはおもむろにしゃがんで俺の頭に手を伸ばした。血管が透けて見えるほど青白い掌はぐりぐりと俺の頭を撫で繰り返す。

「よしよし、よしよし」

いや撫でるというよりは擦り付けるだ。力が強すぎて地味に痛い。チョコラータの真似かよこらぁ、ともう一度唸れば「セッコはかわいい」とゾンビが笑った。口角が引き攣っててブサイク極まりなかったがコイツが笑えることを初めて知った。
されるがまま撫で繰り返されてる俺を益々気に入ったのかナマエはしばらく下手くそな笑いを浮かべていた。
俺はあとでいつもの倍の角砂糖を貰ってやるから覚悟しろよ、と舌打ちをするしかなかった。



20150508

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