赤い灯台が見えたんです、悲しむ貴方が見えたんです
「ケーキか。何かあったのかえつこ?」

三時のお菓子に出されたガトーショコラを見つめてペインはえつこに聞く。
いつもは市販のカットフルーツや和菓子といったものが出されるので、洋菓子でしかも手作りとは如何せん珍しかったからだ。

「今日はバレンタインデーですから。……チョコレートケーキはお嫌いでしたか?」

えつこは紅茶をティーカップに注いでおずおずと差し出しながら聞いた。
ペインは内心少し驚きつつも「いいや」と首を振ってケーキを口にした。
しっとりとした食感と濃厚なチョコの味。甘さも上品で申し分無い。

「やはりお前の作るものは美味いな」
「い、いいえ!お菓子作りはまだまだですよ」

照れているのか顔を赤くするえつこ。ペインはそれを見て僅かに口元に笑みを浮かべながら紅茶を啜った。

「そんなに謙遜するな。俺はお前を雇ってつくづく良かったと思っている」
「えっ…」
「有難う。このお返しは必ずしよう」

輪廻の真剣な眼差しで見つめられ、えつこは黙って益々顔を赤らめた。







ホワイトデーの日、約束通りペインはえつこにバレンタインデーのお返しを渡しに来た。
差し出されたのはシックな黒い箱に入ったオレンジの薔薇を基調にしたフラワーギフトだった。

「これを…私にですか?」
「俺はあまりこういう贈り物をしたことが無いからよく分からんが、小南に聞いたところ花が良いと言っていたのでな」

ブリザードフラワーというものらしい。水をやる必要が無く手間がかからないから安心しろ。
ペインが付け加えるようにそう言っていて、もしかして自分の仕事のことも気遣って選んでくれたんだろうかとえつこは思った。

「ありがとうございます…こんな素敵なお花を頂けるなんて…」
「当たり前だ。お前の作った菓子に見合うような花を選ばなければ等価交換は成り立たない」
「………!」

ペインは真顔でそんな台詞を吐いてみせたが、言われた当のえつこは再び照れ臭さで顔を赤らめることになった。
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