泣き言ひとつで世界週末
「デイダラさん。はいお弁当」
「お、ありがとな…うん」
「あとこれどうぞ」

いつもの昼餉のお弁当を渡すと同時にえつこは何やら小さな箱をデイダラに手渡した。黄色いリボンのかけられたハート柄の可愛らしい箱だ。

「今日はバレンタインデーなので。日頃の感謝と敬意を込めて、拙いものですが…どうぞ」
「は!?」
「チョコレートのカップケーキを作ってみました」

蓋を開ければカラフルなバタークリームで飾られたカップケーキが入っている。ただ、いかにも乙女チックな見た目なので、クールにかぶれているデイダラとしてはこれを持って出かけるのは些か気が引けた。

「こんなん持っていけるわけねーだろ!ファンシーすぎだ!うん!」
「そ、そうですか?私的にはアートできたと思うんですけど…」
「お前ほんとアートなめてんのかコラ」

芸術に関してズレた思考の家政婦にイラッとするものの、へこんだ顔をされて怒る気もなくなる。
しょーがねーなー!と金髪をかき上げながらデイダラはため息を吐いた。

「帰って来てから食べるから、ちゃんと冷蔵庫入れとけよ?」
「えっ」
「他のやつが食わないようにちゃんと名前書いとけ!うん!」

忘れたら爆発させっからな、と物騒な言葉を残してデイダラは居間の扉を閉める音と共に出ていった。

「デイダラさん、一応喜んでくれたんでしょうか…?」

取り残されたえつこはとりあえずそう受け取っておくことにした。







「おらえつこ、これやるよ…うん」
「え、あ、はい?なんですかこの可愛い鳥さん」
「かわいいって言うな、かっこいいに訂正しろ!」
「か、かっこいい…」
「だろ?うん?」

ホワイトデーにえつこはデイダラから手のひらサイズの鳥の置物を貰った。デフォルメされた形でなんとも愛らしい顔をしている。

「これデイダラさんの…?」
「おうよ、オイラの作品貰えるなんて有り難く思えよえつこ」
「…えぇ、ありがとうございます。大事にしますねデイダラさん」

自慢げなデイダラが微笑ましくてふふふと笑いつつ、えつこは頷く。「えつこも芸術ってのが分かったてきたじゃねぇの」とデイダラもにやりと上機嫌に笑い返した。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -