ぼくが宇宙できみが銀河で合理的
「鬼鮫さん、あのぅ…」
「なんです?」

えつこに声をかけられ、これから仕事に出掛けようとしていた鬼鮫は振り返った。
袖まくりをした手には何やら青いリボンのついた洒落た箱がある。

「こ、これをどうぞお受け取り奉ってください!」
「嫌です」
「えっ!?」
「冗談ですよ」

にやりと笑うとえつこは意地悪…とぼそぼそ呟いて拗ねたような顔をする。21にもなって餓鬼みたいだと思いながら鬼鮫は箱を開けた。
中にはホワイトチョコでできたトリュフが入っていた。薔薇の模様が入っていて見た目もなかなか凝っている。

「…そういえば今日はバレンタインでしたか」
「き、鬼鮫さんにはお菓子作りなんか教えてもらっていますし、日頃のお礼です…」

照れながら答えるえつこをしばらく見据え、チョコレートを一つ口にした。
咀嚼すると甘酸っぱいラズベリーのガナッシュの味がした。

「……初めてにしては合格点ですねェ」
「えっ!本当ですか?」
「初めてにしては、です。思い上がられては困りますよ」

釘を刺してから鬼鮫はチョコレートの箱を鞄にしまった。
きついことを言われたえつこだったが、表情はたいそう嬉しそうだった。

「なんですか。ニヤニヤして」
「だって鬼鮫さんにお菓子を褒められるのってなかなか無いから、嬉しくて!」
「アナタ、本当におめでたい頭をしてますねェ…」

家政婦がキラキラと目を輝かせる様子が間抜けに見えてやや呆れ気味にそう言った。







ホワイトデーの日、えつこの部屋の前には小包が置かれていた。水色の包装紙に包まれ、藍色のリボンがかけられている。
添えられた紙には「この前の菓子の礼です。これでもっとマシになるといいですね」と走り書きされていた。

「鬼鮫さん…かしら?」

中を開くとふかふかとした布製の鍋つかみが入っていた。しかもサメの形をしていてとても可愛らしい。
これを強面の鬼鮫が選んだのだと考えるとえつこは思わず笑みが零れてくる。

「か、かわいい…」

サメの形の鍋つかみを試しに手にはめながら呟いた。
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