マジカルハート滅亡説
季節は二月。世間は2月14日のバレンタインデーに向けて賑わっております。
付けっ放しのリビングのテレビからは女性のアナウンサーが期間限定のチョコレート店について楽しげに紹介していました。


「えつこは誰かにチョコレートをあげるの?」
「えっ」

テレビをBGMに、お料理の仕度をしていると小南さんにいきなりそう聞かれ、思わず持っていたお玉を取り落としそうになりました。

「あ、あげる相手なんて、そんな、いるわけないじゃないですかあははは」
「えつこ、火が強すぎて鍋がふいてるわよ」

あまりに動揺しすぎていたのか鍋が悲惨なことにも気付きませんでした。落ち着け私…!


「そういう小南さんこそ誰かにチョコレートをあげるんですか?」
「遠くに出張中の恋人にあげるつもりよ。あと義理でここの住人達にも」
「住人さん達にもですか?さすが小南さん…お優しい…!」
「あら、勘違いしないで。せいぜい毎年ブラックサンダーかチョコボールよ」
「さすが小南さん手厳しい!」

ポーカーフェイスでさらりと言ってのける小南さん。うーん…チロルチョコよりはまだ救いがあるから良いですよね、美味しいですし!


「そうですか…では私も何か差し上げたほうが宜しいですよね?」
「やっぱりあげるのね」
「あくまで私も義理ですよ!日頃の感謝と敬意を表するためです」
「……まぁ、そういうことにしといてあげましょうか」

一応のところ小南さんに納得して頂けたようです。すごく意味ありげな含み笑いを返されてしまいましたが。
私はお鍋のシチューをかき回しながらチョコレートの用意を揃えておかなければと考え始めていました。

あぁなんだか、義理といえども異性の方にチョコレートをあげるなんて…変にドキドキしてしまいます。
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