番外編 | ナノ

▼とびっきりの悪い事がしたい

【かささぎ/アクセル】いつものことだからすぐにやめてくれる。そう思ってタカをくくっていたけれど、今日のこれは危険だと首をぎりぎり絞めあげる力で直感する。死ぬ、死んじゃう。声の出ない喉で命乞いをすれば、化石みたいに枯れきった目が私を見下ろす。「殺してやるよ。」あ、ごめんなさい、好き。


【かささぎ/フェルディナンド】あの陶器の面さえしていれば犬は人間に見えるらしい。「仕草と言葉遣いに気品がある」「気が利くし親切だ」最初、何奴のことを噂しているのか皆目検討がつかなかった。たった今私の足下で跪いて靴を磨いている異形を見遣る。歪に笑うコイツがどうやったら淑女に見えるというのか。


【かささぎ/マジェント】「どうだ醜いだろ」自棄になって、抉れてぽっかり空いた穴を見せつける。コイツがどんな顔で嘲笑うのか気になった。しかし予想は外れる。「醜くなんてありませんよ。だってこの世で一番醜いのは私ですもの」……そうだった、目の前にいるのは化物だった。真っ白い景色に泣顔の輪郭が溶けていく。


【かささぎ/ブラックモア】叩かれる、と身構えたがいつまで経っても平手はとんでこない。それどころか私の胸倉を捕らえていた手が離れる。「もういいです…何か飲み物を淹れてください」こめかみを押さえてぎゅっと目を瞑り彼は椅子に腰掛けた。「コーヒーか紅茶か…」「別にどちらでも」今日はなんだか優しい。


【かささぎ/ブラックモア】一昨日床に打ち付けられた頭が痛い。昨日殴りつけられた頬が痛い。そんな痛みの中から、蛍の光程の幽かな快楽の火種を手繰るのが得意になっている。現在テーブルの下で踏まれている爪先に意識を集中させながら、向かい合わせに座って本を読む彼を見つめる。「面白いですか?」「いえ別に」


【かささぎ/ウェカピポ】イタリア出身というだけで男は誰もが饒舌で女に優しいという偏見は根強い。肩を寄せあって小鳥のようにキャッキャ騒ぐ貴婦人が視界の端に入る度に疲労の感じるようになった。「渡すもんか」低い声が耳を這いずる。傍らの貪欲が面の下から毒を噴き出すように憎悪を滲ませていた。


【はうす/イルーゾォ】「病気で死にそうな顔してるわ」「お前はシャンデリアで押し潰されて死にそうだよ」なによそれ、と鼻で笑う。何時死んでも分からない我が身だ。自分の死因のことをまるでインディアンポーカーのように言い当てるのはよくやる暇潰しの一つだ。正解かハズレかは分からないのでゲームとして成立たないが。
「アンタが死んだとしても泣かないわ、葬式にも出ないわ。時間の無駄だし」「俺もだよ。お前のこと別に好きでもなんでもないし。むしろ嫌い」車を運転する横顔をちらっと見れば、いつも通りの魚みたいな変なしかめっ面をしている。解答は分からないから会話はぶつんとそこでお終いになる。


【はうす/ペッシ】先輩は小さくて綺麗なものが好きみたいだ。玉虫色に輝くルアーに見入っている横顔を盗み見る。心無しか表情が柔らかい。確認して思わず口角が上がる。「良い趣味してるわね」キャンディが入っていた缶にぎっしり詰まっているルアーをまた漁る。じゃらじゃらと小さな手で小魚達を掻き回す音に気分が和む


【はうす/ギアッチョ】「暑い」台所の床で少しでも涼もうとしているのか死んだように倒れているガキ。暑いというわりによく太陽光を吸収しそうな真っ黒い服を着込んでいるところを見ると結構コイツはアホだ。「おいこんな所で寝てんじゃあねェぞ、邪魔だ」「それは無理」「パンツ丸見えだぞ」「殺すわよ」


【はうす/ソルベとジェラート】「アイツってお前らには素直だよな」メローネがサラダを咀嚼しながら言う。思わずソルベと顔を見合わせる。アイツといわれて頭に浮かんだのは同じ少女。毎朝弁当を差し出せば青白い顔で「いつもありがとう」「いってきます」と言う女の子。「あの子はいつでも素直さ」「ウッソだ〜!」

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