番外編 | ナノ

▼世界中どこにでもありふれたことばで

年明けを迎えたばかりのナポリの街は賑わっていた。通りは人が行き交い、浮かれたアルコールの臭いが鼻をつく。
冬の冷たい空気は衣服の隙間をぬって肌を突き刺し、私達の動きを緩慢にしていく。
「さっみー」
隣を歩くメローネが、マフラーの下で鼻を啜る。長く垂らした金の前髪がパリパリと音を立てて壊れそうだと思った。
なんで新年を迎えて早々、こいつと早朝から買い出しになんて行かなくちゃあいけないんだろうか。
エビのように赤く曲がった片手に抱えた紙袋を睨みつけた。ワインボトルに眠そうで不機嫌そうな自分の顔が映って益々うんざりする。

ふと、気付けばもう一方の片手をメローネにぎゅっと握られていた。案外ザラザラしたそれは氷みたいに冷たい。私の掌が温かいから余計にそう感じるだけだろうか。
「お子様は体温が高いな」
「あんたの手、不潔なんだから触らないでくれる?」
「失礼だなぁ、昨日ヌいた後ちゃんと念入りに洗ったぜ」
「最低」
手を振り払って、そのまま脇腹に肘鉄を入れれば軽く呻き声をあげた。それでもすぐ、はにかんで笑うメローネはどこかはしゃいでるみたいに思えた。
寒さのせいで頭をやられたのかしら。あーあ可哀想に。

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