番外編 | ナノ

▼どうしようもないあなただから

首輪に繋がれた犬や、鳥籠の鳥は飼い主から見放されたらどうなるんだろう。自力で囚われの身から脱して逃げるだろうか。俺は多分、飼い主を待ち続けて餓死するんだと思う。
「違う違う、息止めてどうすんだよ。下手糞だなぁ」
「すいません…煙草ってあまり、よく、分からなくて…」
大統領のペットは煙草を吸ったことがないらしい。煙草を買ってきてもらったついでに一本咥えさせてやったのだが、吸い方がまるでなってない。煙を飲み込んで激しく噎せる「室内犬」は涙目のまま、いつものように申し訳なさそうに謝ってくる。
ラークの嗅ぎなれた香りが格式高い公邸の壁紙を今まさに汚しているというのに、「室内犬」は何も変わらない。可哀想に。つまらない奴。
「その歳で煙草も吸ったこと無いとか、冗談だろ」
「そういう…自由は、今まで…無かったもので…」
「………じゃあ今は?自由?」
聞き返せば、やけにはっきりとした口調で「自由ではありませんが幸せです」とアイツはにっこり笑って答えた。何を犬小屋の中でごちゃごちゃぬかしてんだこの阿呆アメリカンコッカースパニエルは。嗚呼もう頭ン中お花畑と会話するのは苛々するなぁ。せいぜい国という名の飼い主に飼い殺されてしまえ。心の中で無茶苦茶に罵りながら「室内犬」の耳を抓って引っ張った。「ぁ、いたい、なんで、」何で抓られてるかも分からないらしい。それじゃいつまでたっても煙草もマトモにふかせやしねぇよ。
こっちを見上げてくる涙を浮かべた目、中身を覗くと蕩けて澱んでいる。腐った祖国で散々見た瞳だ。俺はそれを鼻で笑った。今殺されようとしている獣のように哀れな大統領のペットは意味も分からないままに謝っている。

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