*「ふぁんはうす」夢主とプロシュートorメローネorソルベとジェラートお相手
→プロシュート夢にさせて頂きました。




視界の隅に見慣れたブリオーニのスーツが目に入った瞬間、思わず胸がムカムカした。
あいつ、まさか本当に来るなんて。
広げた脳科学の分厚い本を握る指先に思わず力が入る。

「誰のお父さん?」
「かっこいいー」

パイプ椅子に長い脚を組んで座るプロシュートに、クラスメイトの女子達が色めき立って囁く。それだけでなく同じ父母席に座る他所の母親達や、うちの担任教師のオバサンまで密かに視線を投げかけ見惚れている。『子持ち主婦が子供のクラスメイトの父親と泥沼不倫関係!!』なんて週刊誌に載ってそうな大袈裟な見出しを容易に想像できた。本当に勘弁してほしい。こんなとこでまでスキャンダルを起こされたら面倒だ。





「授業参観日」と書かれた紙をプロシュートに見られたのがそもそもまずかった。
学校が終わった帰り、迎えが来る前に学校で捨てるか火をつけて燃やすかしようとしていたのだがあっさり見つかった。
来なくていいと散々言っているのに、「お前のとこの学校やたら父兄は行事参加しろって煩いじゃねぇか」とか「お前ただでさえこの前問題起こして担任から目付けられてんだろ?親が出るくらいしないと怪しまれるぞ」とか理由をこじつけられて、あいつのスケジュールに「ナマエの授業参観日」が加えられてしまった。
ただ、その時は私もどうせ悪質な冗談だろうくらいにしか思っていなかった。まさかパッショーネのギャングが小学校の参観日になんてわざわざ来る筈が無い。いくら頭の足りない脳筋プロシュートでもそれぐらい分別があるだろう。
そう信じていた私が馬鹿だった。いや、プロシュートが馬鹿なのだ。





「本当に来るなんて、馬鹿じゃないの」
「馬鹿とは何だよ。仮にも父親に向かって」
「黙れ」

授業が終わってすぐにプロシュートを廊下に連れ出して問いただせばこれだ。「父親」というところをわざとらしく強調して言うと、ニヒルな笑いを向けてくる。
プロシュートは意地が悪い。こういうサディスティックな男に世の中の女は弱いというのをメローネから聞いたことがあるが、もし事実だとしたら世の大半の女の嗜好を疑う。私がもし成人したとしてもこういう男とは絶対にミラノへ買い物デートにも行きたくないし、ローマでジェラートを一緒に食べ歩きもしたくない。
まぁ…それ以前に私に男と交際したいという願望は一切無いのだが。

「え?あの人ってナマエのお父さん?」
「なんか話してるよ」

耳に入ってきた声で我に返る。見れば、帰りがけの女子生徒が三人いた。全員、知っている顔だった。私とプロシュートを見てコソコソ話している。最も、隠す気は無いようで声はデカい。私達の方にもはっきりと内容は聞こえた。

「まさかあの変わり者のお父さんとか信じらんない!」
「でも全然似てないよね?血繋がってないんじゃない?きっとあいつ貰いっ子なんだよ!」
「だよね、アタマが変だからほんとのパパとママに捨てられたんだわきっと。かっわいそー」

“変わり者”というのはクラスでの私の蔑称だ。クラスメイト全員が私をそう呼ぶ。前にいた孤児院でも馴染めなかったが、相変わらず私は同年代の子供の中にいると浮くらしい。
噂を好き勝手たてられるのも慣れっこだ。今さら親と血が繋がってないだとか言われても何とも思わない。(事実繋がっていないどころか親でもないのだし)

くすくす笑ってる餓鬼三人を尻目に無視して、私は歩き出そうとした。
しかしプロシュートは違った。いきなり私の目の前に跪いたかと思うと、結んだ三つ編みを片方手にそっと載せた。長い指がきつく編んだそれを撫ぜる。

「さ、帰ろう。愛しの娘」

グレイトフルデッドの効果で少しだけ老けた顔がふっと笑う。そして、三つ編みに口付けが一つ落とされた。
思わず、うへぇと顔を歪めてしまった。何こいつ気持ち悪い。
反して後ろで餓鬼三人のキャーキャー騒ぐ黄色い声が聞こえる。嘘!やだ!!羨ましい!!何あれ!?といかにも悔しそうに叫んでいるのが分かった。

「行くぞ」

三つ編みから手を離し、プロシュートは何事もなく立ち上がって私の手をひく。

「今の、何のつもり?気でも狂った?」
「ン?あの生意気なガキ共にひと泡吹かせられただろ?俺が美形な父親で良かったな」
「……余計なことしないでくれる?」
「馬鹿。俺がムシャクシャしたからやりたかっただけだ」

見上げたプロシュートの横顔はしてやったりといった表情だった。矢張りこいつは意地が悪い。
私は「あっそ」と言ってブリオーニのズボンの脛を蹴った。いってぇふざけんな糞ガキ、と怒鳴る声が降ってくる。フンと鼻を鳴らしてやった。



20151230




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