たまにはしろみ

*荒木荘設定
*おばさん家政婦夢主
「ナマエは吸血鬼になる気はないか?人間などよりずっと気楽に生きられるぞ」
台所に立つ女の隣に並び、そう教えてやればきょとんとした様子で私を見返してきた。ハリのない肌も目元に寄る皺も人間の老いをまざまざと感じさせて惨めだと思った。
ナマエははにかむとすぐに目線を外し、とんとんとんとんと一定のリズムでまな板の上の人参を切る作業を再開した。
「そうね…おばさんは遠慮するわ」
「どうしてだ?」
「だって吸血鬼とか不死身とか、忙しそうなんですもの。カーズ様は平気だろうけど、私はそんなに急いだらきっと目が回ってしまうわ」
ナマエは自嘲気味にふふふと笑う。人参を切り終わり、陽だまりのようにあたたかい色をした切片をボウルに入れた。
「それに私が普通のおばさんじゃあなかったらきっと家政婦の仕事ができないですし、そうなると荒木荘の皆さんのお料理をこうやって作ることもできないじゃない」
それはちょっと寂しくていやだわ。
目尻と口元の皺がくしゃりとなって女の笑みを一層柔らかに見せた。下僕女の言う通り、確かにそれは少し困ると思った。この女の作る食事は人間のモノだというのになかなか美味いからだ。それにこいつはよく動き、働く。このまま無力な人間のままにしておいた方がいいかもしれないな。
「あら…この南瓜なかなか硬いわねぇ」
「…フン、相変わらず貧弱だなナマエ。どれ、輝彩滑刀で切り刻んでくれよう」
「まぁカーズ様はやっぱり頼もしいわね。まな板ごと切らないように気を付けてくださいね」
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